経済・社会

2020.05.22 18:00

その関係、密です? 問われるメディアと権力の「ソーシャルディスタンス」

Getty Images


特ダネをとるための「非公式取材」の延長線上で起きた


ここでいう特ダネとは何か。ほかの報道各社に先駆けて(冗談でも比喩でもなく1秒でも速く)、捜索や逮捕など特捜部の捜査の動きを報じることである。「特捜部が~を捜索」「特捜部が~を任意聴取」などのニュースが代表的なものと言える。事前に容疑者の姿を隠し撮りするための内偵情報をつかむことは記者にとって重要だ。(朝日新聞は“ゴーン事件”で身柄確保前に羽田空港に降りたプライベートジェット機をスクープ撮影した)
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これは全国の警察も検察も同じだが、基本的には特定の捜査幹部のみが取材の窓口(広報対応)となる。通常、幹部は取材に通り一遍の対応しかしない(当然だ)。未発表の捜査情報をしゃべっていいはずがない。

ちなみに、よく言われる「リーク」(当局が意図的に特定の報道機関や記者に情報を流すという意味で使われることが多い)については、そう思われる動きがまったくないと言うつもりはないが、実際の取材はそんなにやさしいものではない。基本的には、情報は「もらう」ものではなく「とる」ものだ。

そこで、各社の記者は、幹部はもちろん、“ヒラ”の捜査関係者を含めて幅広く、“非公式に”接触することになる。いわゆる「夜討ち朝駆け」取材である。主に、関係者の出勤前や帰宅時に、自宅周辺や最寄り駅などで取材することを指す。夜討ち朝駆けは日本独特の(そして伝統的な)取材活動だと言われている。
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幹部と庁舎内の“公式”取材を通じて関係を築き、会食に行くこともある。当然、事前の会費制もしくはワリカンで、たとえば振り込め詐欺や裁判員裁判について率直に意見交換し、特集記事や番組制作のヒントにつながることも少なくない。

たとえば、洗濯機に子どもが閉じ込められる事故や、貧困により熱中症で死亡するケースなど、当局の公式発表ではなくメディアが独自の取材で社会問題として報じ、警鐘を鳴らすこともよくある。

“庁舎外”で“公務時間外”の取材は、基本的にすべて“非公式取材”という位置づけになる。各社の記者は、夜討ち朝駆けや会食も含む“非公式取材”の部分でも人脈と信頼関係を構築し、他社との差をつけようとする。

話を今回の賭けマージャン問題に戻すと、朝日新聞社員のC氏は、現在は記者職を外れており、朝日新聞社はコメントで「取材活動ではない、個人的な活動」としているが、記者として取材を通じて黒川氏と知り合い、結果的に20年越しの付き合いを続けていることになる。

C氏は、かつて検察担当を務め、2017年までは編集部門に在籍していた。さらに産経新聞社会部記者2人も同席していることから「個人的な活動」と言い切ってしまうことに疑問を覚える人もいるかもしれない。

いずれにせよ、今回の「賭けマージャン」問題は、“非公式取材”の延長線上で起きたことだと言うことができると思う。
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文=島 契嗣

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