世界銀行のデータによると、1日あたり1.9ドル以下の収入で暮らす極度の貧困状態と定義される人々は2015年時点で7億3400万人に及び、世界人口の10%を占めていた。
以前の予測では、パンデミック以降に極貧状態に陥る人口は4900万人とされていた。しかし、ヘルスケアシステムや各国の経済システムが被る打撃は、以前の見通しを上回ることになる模様だ。
「新型コロナウイルスの感染拡大や、それに続く都市のロックダウンが、健康面と経済面に与えるダメージは、特に発展途上国において深刻だ」と世界銀行のデーヴィッド・マルパス総裁は述べた。
マルパス総裁はさらに、今後の世界的な景気の落ち込みによって、世界経済が5%の減速になると予測した。
世界銀行は緊急支援プログラムを立ち上げ、世界人口の70%を占める100カ国を対象に1600億ドル(約17兆円)の支援を行う計画だ。資金は今後15カ月をかけて注がれ、各国のヘルスケアや経済復興及び社会保障拡充の支援を行っていくという。
100カ国のうち39カ国はアフリカのサハラ砂漠より南の地域の国々で、アフガニスタンやハイチのような紛争地帯の諸国が3分の1を占めている。
マルパス総裁は声明で「経済発展を取り戻すためには、迅速で柔軟なアプローチにより公衆衛生上の危機に立ち向かい、貧困層に現金を給付し、民間セクターの経済活動を支援することが必要だ」と述べた。
貧困層が特に増加している国としては、南アメリカで最大の国であるブラジルがあげられる。ロイターによると2019年末の時点で、ブラジルでは1300万人以上の人々が極貧状態に置かれていた。
ブラジルにおける新型コロナウイルスの感染者数は5月21日時点で29万人を超えており、米国(150万人以上)やロシア(30万人以上)に次いで世界3位となっている。ブラジルの右派政党出身のジャイル・ボルソナロ大統領は、ウイルスの危険を軽視するスタンスをとり、ロックダウンに踏み切ることに反発している。