立ち上げたのは、「新型コロナウイルス感染症対策の専門家有志の会」。代表発起人を務める東北大学の小坂健教授は、厚生労働省のクラスター対策班のメンバーでもあり、「8割おじさん」で有名になった同メンバーの北海道大学の西浦博教授らも有志の会に名を連ねている。
4月3日に設立された基金で、4月17日には早くも第1期の助成を実施した。なぜ国の新型コロナ対策の最前線にいる専門家がクラウドファンディングなのか? 成り立ちと込められた思いを発起人の小坂教授とプラットフォームを提供するREADYFOR(レディーフォー)CEOの米良はるか氏に聞いた。
2カ月で3億円の舞台裏
今回の基金の立ち上げのきっかけは、レディーフォー社内の会話だったという。
「新型コロナウイルスの影響が深刻化する中で、社内のメンバー100人ほどで、自分たちのリソースを使って何が実現できるのか、フラットに話し合いました。2月には意見をもとに自粛イベントの主催者を支援するクラウドファンディングプログラムを立ち上げましたが、その後、医療機関への支援を始めたいという意見があり、ご縁のあった東京コミュニティ財団と小坂先生と話が進みました」(米良)
一方、小坂教授は政府の新型コロナウイルス対策に参加する専門家だ。実は、周囲からは民間で資金を集めることに対して慎重な意見も出た。
「現場の医療機関ではマスクやPPE(個人防護具)がなくて非常に困っている。しかし、国は意思決定に時間がかかる。助成もすぐには届かず、対策が後手に回っているという状況でした。慎重な意見もありましたが、緊急時こそ覚悟が必要です。遅い遅いと批判して待っているだけではなくて、できることは自分たちでやるという世の中に変わりつつあると思っていたのもあり、米良さんの覚悟に動かされて、やるしかないと決めました。ただ、こんなに急にすごい金額が集まるとは正直思っていなかったので、驚きました」(小坂)
基金は設立当初から米大リーグの田中将大投手ら有名スポーツ選手やプロ野球選手会などがSNSで寄付を発表し、大きな話題に。名前を出していない著名人からのまとまった寄付もあった。
また、アリババが企業として寄付したほか、SONYが従業員の寄付した金額に応じて会社が同額を寄付する仕組みを実施。楽天やファミリーマート、マネックス証券などが実施した募金の一部も寄付された。
ただし、1万人以上の支援者のほとんどは個人。助成は4月から7月まで毎月1回、4期に分けて実施されるが、その後は個人でリピートする人の存在が金額の伸びを支えたという。