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2020.06.02 21:00

「がん治療」は新型コロナと似ている 志村けんの死が衝撃だった理由

撮影・岩澤倫彦氏


志村けんの死が衝撃的だった理由


新型コロナによって、日本を代表するコメディアンが亡くなった。
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「著名人はVIP待遇の特別な治療を受けていたのに、それでも回復できなかったのか─」

こう考える人は多いようだが、それは誤解だ。


Getty Images
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志村けんさんが入院していた、国立国際医療研究センターは、日本の感染症対策の司令塔というべき病院で、著名人でも一般の患者でも等しく最善の治療を行なっている。

これは、がん治療においても、同様なのだ。

保険診療で受けられる、がんの「標準治療」は、現時点で最も有効性が高い治療である。国民皆保険制度に基づく世界に誇れるシステムなのだが、意外にも理解していない人が多い。

慶應大学病院・腫瘍センターの浜本康夫准教授(消化器内科)が、がん治療の現実を話してくれた。

「社会的に成功した人、有名なアスリート、会社経営者の患者さんは、お金をたくさん払ったほうが特別によい治療を受けられると思う傾向が強いです。根性で人生を乗り切っているので、大きく投資するほど、よい結果が返ってくるという、ご自分の成功体験を医療にも当てはめているようです」
 
「特別な治療」を希望するセレブ患者に対して、「標準治療」が世界でも最高レベルのがん治療と浜本准教授が説明しても、その後、通院しない患者もいるという。

一方、アメリカは民間の保険会社が、契約内容によって、受診先の病院から検査・治療の内容まで細かく指定する。高い契約ほど、良質で手厚い治療を受けられる仕組みだ。

残念ながら、「三途の川もカネ次第」という非情な現実がある。

がん治療情報の誤解


がん治療に関する情報には、常識と思われていることが、実は間違っていることも多い。例えば、次の7項目のなかで、正しいと思う内容は、どれくらいあるだろうか?

1.「がん検診の結果が〝異常ナシ〟だったので、当分は安心していい」
2.「自由診療のがん治療は、保険適用の診療よりレべルが高い」
3.「手術や放射線治療をすると、がんが暴れ出して、かえって早死にする」
4.「抗がん剤は毒なので、身体を弱らせるだけ。拒否したほうが長生きできる」
5.「ステージ4は末期がんなので、延命治療しかない」
6.「がんのエサは糖。だから、糖質制限でがんは消える」
7.「緩和ケアは、死ぬ間際に痛みを止める目的で受ける医療」

正解は、7つすべて「×」。

「抗がん剤」に関しては、著名な近藤誠医師が、派手に批判を展開してきた影響もあって、今でも治療を拒否する患者がいる。だが、近藤氏の主張は20年以上も前の抗がん剤について述べていることをご存知だろうか?

現在では、副作用を抑える技術が進み、効果の高い抗がん剤も開発されている。

また、「治療すると、がんが暴れ出す」という近藤理論で引き合いに出されるのは、1993年に胃がんで亡くなった故・逸見政孝さんのケース。27年前と現在では、治療技術が格段に違う。こうした古い時代の医療を基準にした「フェイク情報」を信じてしまうと、助かるはずの命を失うことになる。
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文=岩澤倫彦

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