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撮影・岩澤倫彦氏

いざ「がん」と診断された時。われわれはどんな情報を元にどう判断し、どう闘うべきなのか。保険診療で受けられる標準治療以外に「独自のがん治療」と称した様々な自由診療があるが、これについてどう考えるべきなのか。

世界文化社から、がんになった時のための実用書、「賢いがん患者」になるための指南書として『やってはいけない がん治療』が刊行された。本書の著者であるジャーナリストの岩澤倫彦氏に、以下ご寄稿いただいた。


「若者は新型コロナに感染しても発病しない」、「マスクの装着は必要ない」……。

3月中旬、ワイドショーなどで、このように力説していた医者がいた。様々なテレビ番組に出演している医者だから、信じた人も多いだろう。 

それから1カ月後、新型コロナで若者も発病することが明らかになり、感染拡大の防止にマスクは必需品となっている。

調べてみると、冒頭の主張をしていた医者の専門は、感染症ではなかった。命を左右する情報であっても、専門外の医者が根拠もなく「独自理論」を主張していたのだ。

そして、がん医療の現場でも、同様のことが起きている──

がん治療に手を出す専門外の医者たち


がん治療の歴史を変えたといわれる、免疫チェックポイント阻害薬・オプジーボ。予後が厳しいステージ4の肺がんなどで、画期的な効果が証明された新薬だが、強い副作用によって死亡者も出ている。

患者の安全性を確保するため、製薬会社と関連学会は、オプジーボの使用について条件を設定。「救急対応が可能な病院」、かつ「専門資格を持った医師」に限定した。


Getty Images

だが、このような条件を無視して、自由診療クリニックがオプジーボと免疫細胞療法を組み合わせた、「独自理論」の治療法を堂々と行なっていた。しかも、クリニックの医師が、最近まで専門家としてマスコミに登場していたのは「下肢静脈瘤治療」。むろん、関連学会が指定する専門資格も有していない。

この自由診療クリニックの治療費は、1クールで約500万円。自由診療は治療費を自由に設定できるから、莫大な利益を得ることが可能なのだ。

一般的な町のクリニックが「副業」として、がん免疫細胞療法をやるケースもある。重大な副作用や、がんが悪化した場合の対応を聞くと、クリニックの医者はこう答えた。

「救急車を呼んでください。ここは入院施設がありませんので」

がん患者の中には、「幼い子供がいるから、いま絶対に死ぬわけにはいかない」という人もいる。そうした切実な心境を見透かしたように、自由診療クリニックは「末期がんでも完治を目指す」などのキャッチコピーを掲げて宣伝するのだ。

ここで注意しておきたいのが、画期的な「独自理論」のがん自由診療は、外部の客観的な検証ができないブラックボックスになっていること。ウェブサイトで公表されている治療成績は、額面通り信用しないほうがいい。

文=岩澤倫彦

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