──先ほど5Gの適用範囲として、「渋谷」という話が出ましたが、1つの街も、ある意味、コンテンツと捉えているのですね。
実は、昨年9月から、渋谷区と「渋谷エンタメテック推進プロジェクト」を立ち上げています。KDDI、渋谷観光協会、渋谷未来デザイン、この3者でエンターテインメントとテクノロジーを使って、街全体をアップデートするというプロジェクトを進めていて、毎月デジタルアートや音のARなどのイベントを開催しています。
そして、今年の1月からは、渋谷エンタメテック推進プロジェクトを衣替えして、「渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト」に改名しました。何が変わったかというと、これまで3社でやっていたのをコンソーシアムにして、新たに32社が入る仕組みにしました。
スポーツメーカーやアパレルメーカーなどさまざまな業界の企業も加わり、5Gを使ってコンソーシアムをやりましょうということになりました。通信会社はウチだけなので、KDDIが核となって、渋谷の街をデジタルアートで盛り上げようと取り組んでいます。
バーチャルな世界で人間は自由になれる
──ほかに5Gを使ってこんなことを実現したいなど、どんなビジョンがありますか?
インターネットが張り巡らされ、インターネットでできる当たり前がすべての社会生活のなかに実現されるようになると、人は限りなく人間らしい生活に戻っていけるのではないかという仮説を、私は持っています。
社会が生まれ、村ができ、定住を始め、法律ができ、学校ができ、会社ができ、生きるルールがきっちりとでき上がってくると、人間は何かに属さなくてはいけなくなってしまった。会社、学校、国にと。しかし本来、人間はそういうものではなかったはずだと、私は思うんです。
インターネットの世界ではそういうことはありません。さらにバーチャルの世界なら、人間はもっともっと自由になれます。アバターで男性になったり、女性になったり、複数の人格を持てる。リアルな世界だと、どうしても既存のカテゴリーに嵌められてしまいますから。男性です、◯◯会社の社員ですというように。
人間は、本当は、限りなく神経質だけれど、実はルーズな面もあるなど、矛盾した二面性を持っている。だから面白い。人間の持つ多面的なところ、そういう本質というのは、バーチャルな世界でこそ実現されると私は思っています。