KDDIは2019年、CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)の「KDDI Open Innovation Fund3号」を通して、22社へ出資を行っている(7月31日現在)。国内事業会社のスタートアップ企業への投資が増加している中、その最も先駆的であり、象徴的な存在とも言えるのが同社である。
19年の投資先には、波動制御技術をコアとした視覚触覚技術の社会実装を行う、落合陽一が代表取締役CEOを務めるピクシーダストテクノロジーズ、VR会議などVRコラボレーションサービスを提供するSynamon、ライブ配信に特化した事業を展開するライバー、シェアフロント型コンパクトホテルを提供するHosty、インドネシアでP2Pレンディングプラットフォームを提供するシンガポールのDigital Alpha Groupなど、国内外の多岐にわたる事業領域のスタートアップがある。
「『ポスト・スマホ時代のグーグル』を生み出したい。これから迎えるポスト・スマホ時代は、グーグル、フェイスブックも横一線で、ガラケー時代に私たちが行った米グーグル、グリー、コロプラへの協業支援という成功事例を超えるようなチャンスがある。そのため現在、国内外で積極的に投資を行っています」とKDDIでCVCやアクセラレータープログラム「KDDI ∞ Labo」を担当する経営戦略本部ビジネスインキュベーション推進部長の中馬和彦は話す。
「KDDI Open Innovation Fund3号」は18年4月、KDDIとグローバル・ブレインが共同で設立し、運用総額は200億円にのぼる。12年に設立した1号ファンド50億円、14年の2号ファンド50億円からファンド規模をさらに拡大。「5G」時代を見据えた投資事業領域は、AI、IoT、ビッグデータ、XR、ヘルスケア、ロボティクス、ホーム、ニューテクノロジー、金融、スポーツ、エンターテインメント、ニュースペースまでと幅広い。「これまでの投資先63社の業界を書いたらほぼ全事業領域になるのではないか」(中馬)。
さらなる特徴としては、KDDIが17年8月にM&Aした、IoT向け通信サービス提供のソラコムとともに「IoT」分野のファンドプログラムを運営し、デジタルマーケティング関連部門がKDDIからカーブアウトしたSupershipと「デジタルマーケティング」分野のファンドプログラムを運営するなど、グループ力を生かした新しい投資のカタチも生み出している。