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2019.09.02 17:00

ポスト・スマホ時代のグーグルを! CVCの先駆者が仕掛ける「進化」


中馬が前任の江幡智宏(現KDDIグループ・mediba社長)から引き継いだのは18年4月。同社が18年度に投資した企業は19社に及び、投資件数が一気に加速。中馬はその理由として、ファンドサイズ拡大に加え、デジタルトランスフォーメーション(デジタル変革、DX)により全産業が加速度的に変化する時代になったことをあげる。

「既存産業がデジタルと、さらにスタートアップとかけ合わさることで、進化し、新しいモデルを生み出すのがDXだとすると、そこにネットワークを提供している『通信の時代』になるということ。スタートアップ投資も、支援する業界が成長すれば、通信ニーズが高まり、結果、私たちの事業に追い風になる。だから、投資をするか迷ったら出資をして、新しい業界の変化を機敏に捉えたいと思っています」(中馬)

同社のスタートアップ支援は、常に進化を続けてきた。「KDDI ∞ Labo」は開始4年後の15年、スマホ向けのアプリ・サービス提供を行うスタートアップ支援から、事業会社を事業共創パートナーとして集めた大企業エコシステムによる支援へと舵を切った。だからこそ、彼らがスタートアップ支援や投資で大切にしているのは「スタートアップ・ファースト」。中馬曰く、「私たちの言うシナジーは、スタートアップ企業から見た『シナジー』。KDDIのアセットを使ったら成長する会社に投資をしようという考え方。競業避止義務も入れないと決めている」。技術のR&D機能として、もしくは本業の課題解決手段としてスタートアップ投資を行う「刈り取り型」投資だと、スタートアップの成長を阻害する可能性があるからだ。中馬は「成長できなかったら私たちの支援不足だとも言えますね」と話す。

今後について、中馬をはじめとした40人の経営戦略本部ビジネスインキュベーション推進部の野望は大きい。「KDDI ∞ Labo」では18年9月より、5G時代の新たな事業共創を目的にした「5Gプログラム」も大企業34社とともに開始。CVCでのスタートアップ投資も変わらず、国内外で積極的に行っていく。

「小さな成功事例はありますが、世界と比較した際に、それで満足してはダメだと。だからこそ、『世界に名だたる成功事例』を生み出していけたらと思います」


KDDI:2018年4月、グローバル・ブレインと共同で総額200億円の「KDDI Open Innovation Fund 3号」を設立。11年からアクセラレータープログラム「KDDI ∞ Labo」を開始。CVCは12年、1号ファンドを組成し、これまで63社に出資を行っている。

α TRACKERS(アルファトラッカーズ):独立系VCのグローバル・ブレインが2018年12月に設立した、オープンイノベーション推進に積極的な大企業を集めたコミュニティ。日本を代表するCVC運営企業をネットワーク化して各社の活動を支援していく。参画企業はKDDIを含む35社。Forbes JAPANはメディアパートナーとして関わる。

文=フォーブス ジャパン編集部 写真=若原瑞昌

この記事は 「Forbes JAPAN 空気は読まずに変えるもの日本発「世界を変える30歳未満」30人」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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