起業に至るまでの道のりや、経営者としての視点、これからの未来像などについて語り合うが、まず第1回は、驚くほどのペースで上場を実現した重松氏の起業のきっかけやビジネスモデルのヒントについて掘り下げた。
いま世界経済は、新型コロナウイルスによってその様相を大きく変えつつあるが、どんな状況でも自分の「やりたいこと」を信じて進もうとする人たちの力に少しでもなれたら幸いだ。
元榮太一郎(以下、元榮):重松さんは、スペースマーケットを創業してからわずか5年でマザーズ上場まで持っていきました。これまでも広く起業家の世界を見てきたと思うのですが、ここ数年のトレンドや昔との違いについて、何か感じることはありますか?
重松大輔(以下、重松):私は37歳で起業しましたが、このところ起業に対する心理的なハードルがすごく下がっているように思います。スタートアップの界隈で成功者がどんどん出てきて、「自分でもできるんじゃないか」と思わせてくれるロールモデルが増えたことは、大きな変化ではないでしょうか。大企業出身の「ベテラン組」の起業も増えている印象です。
元榮:起業家を取り巻く環境は、この10数年で激変しましたね。僕は2005年に起業したのですが、15年前の当時は「え? 本当に起業するの?」って、周囲に驚かれることが多かった(笑)。起業すること自体が、大胆な決断だった時代です。
当時、僕は200万円の貯金と銀行から借りた300万円の無担保ローン、合わせて500万円からスタートしました。現在のように、ビジネスのアイデアひとつでバリュエーション(企業価値評価)がついて、お金が集まるというような世界ではありませんでしたから。そのあたりも大きく変わりましたね。状況が変わったことで、いろいろな人が起業にチャレンジしやすくなった。
さらに、1999年に東京証券取引所マザーズがスタートして20年余り経ち、周囲にロールモデルになるような上場起業家、イグジット経験のある人たちも増えてきた。起業に対して具体的なイメージも描けるようになり、「自分もやってみよう」と優秀な人たちが続々起業する。そんな良いサイクルに入っているような気がします。
重松さんが起業されたとき、資金はどうしましたか?
重松:1000万円ほどの資金を用意してスタートしました。最初からエンジェル投資を入れることは基本的にはせずに、ある程度プロダクトをつくり、しっかりとバリュエーションを上げたタイミングで、さらに大きな金額を調達しました。
元榮:ビジネスパーソンとしてそれなりの経験を積んでから起業したぶん、貯金があったのですね。それは「大人」のメリットですよね。プロダクトは外注したのでしょうか?
重松:いや、社内で、共同創業者と一緒につくっていきました。2014年の1月に創業して、その年の8月には1億円を調達できました。その時のバリュエーションは、ポスト(資金調達後の時価総額)で7億円でした。元榮さんが起業した当時の2005年では考えられない数字ですよね(笑)。