今、求められているのは、この短期型のUBIを拡大し、長期的に機能させていくことです。これは必ずできるはずです。
公平な課税制度とSDGsの達成
ただし、これまでとは異なるアプローチが必要です。UBIを「施し」や、既存のシステムを補う「絆創膏」として考えるべきではありません。むしろ、パンデミックと壊滅的な経済不況、この二つの危機をきっかけにして、私たちがどこで「今も穴を掘り続けている」のか、再評価するべきなのです。
UBIを成功させるには、公平な課税制度が必要です。各国が国境を越えて協力し、データを交換し、個人や企業が税を回避する行為を阻止しなければなりません。簡単に言えば、一人ひとりが公平に税を負担しなければならないのです。利益を独り占めしたり、損失を社会で補おうとしたりする行為を、良心に従ってやめなければならないのです。
次に、持続可能な開発目標(特に気候変動に対する目標)達成の道を阻む補助金、特に化石燃料への補助金を止めなければなりません。こうした動きが加速するなら、すべての人に利益がもたらされます。さらに、UBIだけでなく、影響を受ける化石燃料の企業を支援するための財源も生じるでしょう。
世界有数の大富豪であるウォーレン・バフェット氏とビル・ゲイツ氏は、富裕層の納税額を増やすべきだと主張してきました。こうした税制が確立されていないために、格差が広がったのです。クレディ・スイスの「2018年度グローバル・ウェルス・レポート」によると、世界の富裕層の10%が、世界の富の85%を所有しています。
![WEF、ベーシックインカム、データ](https://images.forbesjapan.com/media/article/34403/images/editor/f3d661c3a30ffbc0df1e048c213a880f.png?w=640)
複数の調査によると、ヨーロッパでは新型コロナウイルスの危機に陥る前から、UBIは支持されていた
正当な額の税金を納めていないのは富裕層の個人だけでなく、多国籍企業も同じです。アップル、アマゾン、グーグル、ウォルマートをはじめとする巨大企業は、莫大な利益を上げながらも、税制の抜け穴をうまく利用して納税額を抑えています。世界のトップ企業1000社が公平に納税していれば、UBIの額としてはささやかでも、世界全体にしっかりと合理的に分配できるはずです。
より良い国家を築くために必要な資金を政府が得られないのは、間違っていることで、それは仕組みが壊れているためです。