台湾系のヤンはUBIを中心的な公約として指名争いに出馬し、ネット上では熱狂的な支持を集めた。しかし序盤戦で支持を伸ばせず、2月に脱落していた。
支持者らは24日、ツイッターで「#CongressPassUBI(議会はUBIを通せ)」というハッシュタグを使って投稿を始め、一時トレンド入りも果たした。ヤン本人も支持者らに対して、議会にも電話で直接訴えるよう呼びかけている。
元陣営幹部によると、運動は当初5月4日に始める計画だったが、今回の法案がまとまりかけていた段階で個人への現金直接給付が含まれていなかったことから、急きょ前倒しで実施することにしたという。
ヤンが訴えたUBIをめぐっては、3月に成立した2兆2000億ドル(約236兆円)規模の新型コロナ対策法に盛り込まれた現金給付との類似性を指摘する声がある。一方で、景気刺激のための現金給付が1回きりで所得制限もあるのに対し、UBIは毎月実施するもので所得制限もないことから、同一の政策とは言えないとする見方もある。
ヤンは指名争いで全国民に一律月1000ドル(約10万7000円)の支給を主張していたが、この運動をしている人たちは大人全員に月2000ドル(約21万4000円)、子ども全員に月500ドル(約5万4000円)の支給を訴えている。これによって景気悪化を和らげたり、自宅待機を続けやすくしたりできると主張している。
可決できる法案のベンチマークとして、民主党のロー・カンナ下院議員らが提案している「現金注入」法案(編注、昨年の年間所得が6万5000ドル未満だった国民に現金1000〜6000ドルを配る内容)や、民主党のラシダ・タリーブ下院議員らが提案している、個人に年3000ドル(約32万円)、世帯に年6000ドル(約64万円)を支給する法案を挙げる声もある。
UBIはこれまでに、多くの著名人から支持を集めている。新型コロナ対策に10億ドル(約1070億円)を拠出すると7日に発表したツイッターのジャック・ドーシー最高経営責任者(CEO)も、その一部をUBI事業に振り向ける意向だ。ドーシーはUBIを「実験を必要としている素晴らしいアイデア」「世界が直面している、生存に関わる問題に対する長期的にベストな解決策」と高く評価している。
ローマ教皇フランシスコも今月、「権利のない労働者はいないという、人間的でもあればキリスト教的でもある理想を保証し、具体的に実現する」ものとして、「ユニバーサル・ベーシックウェイジ(全員対象の最低賃金保障)」に言及した。
米議会予算局(CBO)の最新の見通しによると、米国の失業率は年内に16%に達し、来年末の段階でも9.5%という高い水準が続いている可能性がある。ピュー・リサーチ・センターの世論調査によると、米国民の大人の43%が自分の家族に失業した人がいると回答している。