UBIへの関心は高い。月額1000ドル(約10万9800円)のUBI支給を提案した起業家アンドリュー・ヤン(2020年大統領選挙に民主党から立候補を表明)を置き去りにして、話題が独り歩きしているほどだ。
フィンランドは2017年から2018年にかけて、約2000人の失業者を受給対象としてUBI実験を実施した。その目的は、UBIによって、受給者の労働時間が伸びたり、収入が増えたりするかどうかを検証することだった。報告書によれば、いずれについても成果は得られなかった。また、期待されていた、また観察されるであろうとみられていた心理的効果については偏りがあったようだ。
UBIには、以下のような重大な問題がある(順番には、特別な意味はない)。
・UBIの支給額だけでは、生活するのに不十分かもしれない。
・支給額が足りない場合には、追加の社会保障が必要になる。
・全員に支給するのか、必要性の基準を設けるか、選択が難しい。
・住宅の貸主(実際の家主・地主を含む)が賃料を吊り上げれば、UBIの価値が失われる可能性がある。
・受給者が働くことをやめ、自尊心や、自らの存在価値を失ってしまうかもしれない。
・UBIプログラムの実施について、政府の承諾を得るのが難しい。
・UBI支給のための財源が必要である。
アメリカでUBIを実現するとなると、とんでもないことになる。米国勢調査局によれば、アメリカの18歳以上の人口はおよそ2億5470万人だ。ヤンが提案したUBI支給計画を導入しようとしたらどうなるか、ちょっと想像してほしい。1人あたりの年間支給額を1万2000ドル(約132万円)とすると、18歳以上のアメリカ人全員に支給する場合、年間で約3兆1000億ドル(約340兆3300億円)が必要となる。
9月締めの2019年度の場合、歳出額は4兆4000億ドルで、財政赤字は1兆ドル近くだった。UBIを支給するには、現時点では約4兆ドルの支出超過となるわけだ。