「日本初のCDO」の経歴からマーケターの歩みを学ぶ|#キャリアトレース Vol.1


価値ある人材になるためのポジショニング


分析もいよいよ後半です。マーケターとして、長瀬氏はどのような環境に身を置いていたのでしょうか。

本人の過去の発言を参照すると、マーケターとしてキャリアを歩む上で一番大事なのは「予算」とのことです。

「マーケターとして年間100万円の予算を使える企業と、年間60億の予算を使わなければいけない企業では思考が変わる。自分が一流のマーケターにもしなれているとしたら、一番大きな要因は与えられた予算。それが叶う企業に所属することを意識的にやってきた」

これがその真意でした。また、Instagramの日本進出や、日本ロレアルのデジタル革命の初期など、成長ポテンシャルが高い仕事を選んでいます。

そうした背景から、(4)「ポジショニング」では予算規模と、企業の成長性を軸にした4象限の図を作成しました。長瀬氏の場合は、「予算規模:大 x 成長性:高」というポジションでキャリア形成をしていますが、この場合の予算や成長性は優劣ではないので、「予算規模:小 x 成長性:低」というポジションで活躍していく道もあるでしょう。



話を(5)「4P」に移していくと、このポジショニングは「Place」とも重なります。

成長性が高く、予算の大きいところに身を置くというのが、長瀬氏の「Place(働く場所)」における“戦略”です。



「Product(市場価値)」では、長瀬氏の独自性を支えている業界を越境した経験に着目しました。

日本のマーケティング業界を見ても、長瀬氏のように多くの業界を渡り歩いている方は珍しいでしょう。また、3社目で経験したユニリーバのブランドマネージャーはマーケティングだけでなく物流や商品開発まで、1つのブランドの経営そのものを見る仕事としてマーケティング界隈でも有名です。

「経営が分かり、デジタルに強く、業界を横断できる」これが長瀬氏の価値になっていると分析します。

「Promotion(認知形成)」は結果論的な面もありますが、周囲からのどのような見られ方をしているかです。分かりやすい例を出せば個人のソーシャルメディアでの影響力もその一つですが、長瀬氏の場合はそれが最重要ではないとも見えます。当たり前ですが仕事の成果という一番の客観的事実があり、そこに「日本初のCDO」といったメディアでの露出などが加わって今に至っていると思われます。

「Price(市場価値)」はPlace、Product、Promotionの結果としての側面があります。これらの総合的な評価が年収に反映されるイメージだとも言えるでしょう。加えて、長瀬氏の場合は英語が話せるため、それが給与水準の高い外資系企業でのキャリア形成に役立っています。実際にユニリーバ時代にはオーストラリア赴任も経験しており、「日本だけでなく海外でも同じ成果を出せる」という点が市場価値が高まる要因の一つになっています。
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解説=黒澤友貴 構成=小野祐紀

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