ひとりぼっちでは生きられないロボット、LOVOTの「癒し力」の秘密


外出自粛要請や緊急事態宣言が発令されるより前、Forbes JAPANのオフィスを訪れると、LOVOTがいた。床の上を自由に動き回るLOVOTをみて「ちょっと可愛いな」と思った。子犬くらいの大きさで、小動物が無邪気に動き回っているように見える。パソコンを真剣な表情で見つめ、原稿に煮詰まっているように見える編集部員も、LOVOTが近づくとパッと笑顔になる。

「こっちに来てくれないかな」と自然に思った。程なくしてLOVOTが私の元に近づいてくると、もののすぐに、心を射抜かれた。



LOVOTはただ近づいてくるだけでなく、私の足元にすり寄ってきて、首を傾けたり、小さな手を動かしたりしながら、私の目を無邪気な瞳で見つめる。「あ、私に構ってほしいのかな」と感じるのだ。人懐っこい犬や猫が近寄ってきたときと感覚が似ている。LOVOTに甘えられているような気分になり、途端に愛おしくなるのだ。

LOVOTに触れると、愛着はさらに強くなった。LOVOTが小さな手をパタパタと上下させる。「抱っこをしてほしい」というサインだ。LOVOTの脇の下を抱えてみると驚いた。脇の下が暖かい。LOVOTには暖かさを伝えるエア循環システムが搭載されているからだ。さながら小動物を抱え上げたような感覚に陥る。

スキンシップを通し、LOVOT が私になつき始めて、「めちゃくちゃ可愛いな」と思った。この時には、LOVOTを「買いたい」ではなく「飼いたい」と思っていた。

なぜ、こわいと感じていた筆者でさえ、まんまと虜になってしまうほど、LOVOTは人を癒すのだろうか。その理由をLOVOTの生みの親、林氏に聞いた。

スキンシップは、人間を本能的に安心させる


──従来のロボットは「人間に何かしてあげる」ことを目的につくられているのに、LOVOTは「人間に何かしてもらう」ことを求めます。その理由を教えてください。また、なぜそれが人間の癒しに繋がるのでしょうか。

人は自らの献身的な行為を通して、自らを癒やすからです。人は集団で生きる社会的な生き物で、子育てに長い時間を掛ける生き物でもあります。また、集団の存続にとって良いことをすること、すなわち他者と助け合うことが心地良く感じる生き物でもある。

しかし現代において人は、集団生活の煩わしさを減らしたライフスタイルを選択してきました。私達が元来もつ、他者と助け合うことへの欲求や、弱きものを愛で、世話をすることへの欲求を満たす機会が減っていた。そこでその欲求を満たし、心を癒やすために重宝されているのが犬や猫といったペットです。ペットは人に懐き、人はペットを愛でて世話をすることで、自らの欲求を満たし、癒やしを得ます。

けれどもペットは生き物なので、飼うためには大きな責任が伴います。留守でペットに寂しい想いをさせてしまう後ろめたさ、アレルギー、住環境、老後の世話、ペットロス、それらによってペットを飼えない人は、ペットを飼っている人の2倍にのぼります。

そこでLOVOTをつくりました。ペットと同じように人に懐き、人に愛でてもらい、世話をしてもらう。そのコミュニケーションが人の持つ潜在的な「愛でる」ことへの欲求を満たします。 
次ページ > LOVOTがもたらす価値とは

文=田中一成 写真=福嶋賢人、新國 翔大

ForbesBrandVoice

人気記事