死亡退職金などの財源に団体保険を活用
実は、企業が福利厚生の充実を図る際に、保険が「裏方」として広く活用されている。たとえば「死亡退職金」は、従業員やその家族にとってありがたい制度だが、数百万円もの急な支出は決算への影響も大きくなる。そのため、福利厚生規程による従業員等の遺族保障の支払財源として、保険契約を結んでいる企業は多い。
具体的には、「契約者=法人、被保険者(保険の対象となる人)=役員・従業員、死亡保険金受取人=役員・従業員の遺族または法人」の形で、法人の定める福利厚生規程(弔慰金・死亡退職金規程等)に基づく保険期間1年の団体保険を契約している。
団体保険と聞くと、任意加入の団体定期保険をイメージする人もいるかもしれない。しかし、団体定期保険では保険料を従業員が負担するが、福利厚生の死亡退職金の財源目的で入る「総合福祉団体定期保険」は、原則として全員加入だが、保険料は企業が負担する。
個人で入るよりも保険料水準が割安であるほかに、企業が負担した保険料が原則として全額が損金に算入(個人事業主は必要経費算入)できる利点もある。そのうえ、従業員に対する給与所得としての課税もないため、税金面でも気兼ねなく導入できる。
では、「見舞金」の場合はどうかというと、少額の一時金をその場限りで支払うものが一般的なため、企業として備える財源としてはそう多くを必要としないのが通常だ。
しかし、見舞金規程を変更して、従業員の病気やケガによる入院や手術にも見舞金を出す場合、長期の入院となった際の会社支出は大きくなる可能性がある。そのため、最近では、生命保険会社の「団体医療保険」を利用して費用の平準化を図るケースも出てきている。
「総合福祉団体定期保険」はすでに導入済の企業も多いが、「団体医療保険」は比較的最近になって普及してきたため、馴染みのない人もいるかもしれない。
たとえば、富国生命の新団体医療保険「メディカルHOPE」の例では、12名以上の会社であれば契約できる。日帰り入院から保障、入院見舞金、手術給付金、放射線治療給付金が付いており、特約の付加で3大疾病の一時金も保障できる。保障を限定(入院限定型)したり、がん入院の保障を手厚く(がん入院倍額型)したりするプランもあり、予算と保障ニーズにあった設計が可能だ。
【出典】富国生命「メディカルHOPE(新団体医療保険)」パンフレットをもとに筆者作成
そういえば、昨今の新型コロナウイルスでは、医療機関のベッド不足が深刻で、軽症であれば自宅待機やホテル療養となるケースが相次いでいる。それに合わせて、民間の医療保険では、医師の指示による自宅待機やホテル療養でも入院給付金が受け取れる対応をしている保険会社も多い。
もしも、従業員が新型コロナウイルスの治療を受けることになったとき、「会社を休んでも大丈夫」という福利厚生があることは、治療に専念するうえで大きな勇気が持てることになる。その財源の裏付けに、団体医療保険を備えておくのも一策だ。
連載:ニュースから見る“保険”の風
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