若者の間で薄れゆく沖縄戦の記憶 これからの慰霊について考えたこと

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──初めてガイドをしてから6年が経ちました。もし、また最初のときの男子学生のような人に出会ったとしたら、どんな対応をすると思いますか?

「被害者づらしている」と感じるに至った背景には、その男子学生のこれまでの人生や、彼が受けた教育がきっと関係していると思います。そして、それは日本という社会が経てきた歴史とも深く関係しているでしょう。彼のような人が見えている世界はきっと私とは違うはず。なぜ「被害者づらしている」と感じるのか? まずは、かつての私のように言葉を失うのではなく、その理由を詳しく聞きたいと思います。

──最後に、今年から社会人になられましたが、これからはどのように沖縄の近現代史とかかわっていくのでしょうか?

やっぱり、沖縄戦のことは私のライフワークとして考え続けたい、活動し続けたいと思っています。大学院時代、雑誌編集のアルバイトをしていたのですが、その時の編集長から誘われたことがきっかけで、「若梅会」として白梅学徒隊の体験と慰霊祭を継承する活動にかかわっています。

白梅学徒隊とは、沖縄戦で従軍看護婦として主に南部での看護活動にあたっていた、沖縄県立第二高等女学校の四年生たちによって編成された部隊です。生存者や遺族の高齢化に伴い、戦争体験や慰霊などの継承が難しくなってきており、私たちのような若い世代がどのような形で次世代に継承できるか模索しています。

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生まれたときから基地との共存が前提で、日本の一部としての沖縄県に暮らしてきた若者世代。戦争や基地に対する意識は他の世代と比べて変化したと言えるだろう。だが決して、若者世代が平和への想いを持っていないわけではない。

前述の高校生を対象としたアンケートにおいて、沖縄戦を学ぶことを「とても大切」「大切」と考えている生徒は94.1%にのぼり、1995年の調査開始以来最高となっている。若者世代は意欲を持っているが、これまでの手法では伝わっていないというのが実情だろうか。

新型コロナウイルスの感染拡大は慰霊の日にも影響を及ぼしている。白梅学徒隊の慰霊祭も、今年は通常の形式での開催が困難になると想定されている。この状況に対して、どのような形で慰霊祭に臨むのか、模索している最中だという。

伊波さんは、沖縄戦という点だけではなく、戦前や戦後の話も含めて、現在につながる歴史として、伝えていきたいと話していた。若い世代が自分たちの言葉や視点でどのように継承していくのか、ぜひ注目したいと思う。

連載:ニッポンのアイデンティティ
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文=谷村一成

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