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ニッポンのアイデンティティ

アイヌ民族舞踊を踊る長野さん(ASAKO YOSHIKAWA撮影)

近年、コミック「ゴールデンカムイ」のヒットにより、アイヌ文化が注目を浴びている。日露戦争後の北海道を舞台に、アイヌの少女が活躍する物語には、アイヌ語やアイヌ料理が随所に登場し、これをきっかけにコミックのファンたちが盛んにアイヌ文化を学んでいる。

とはいえ、現在のアイヌを理解している人は極めて少ないだろう。私は学生時代に東京のアイヌ料理店でアルバイトをしていた。そこにはたくさんの「ゴールデンカムイ」のファンが訪れていたが、現代のアイヌの話をすると、「アイヌってまだいるんですか?」と驚いた表情をする。もう過去の民族だと思っている人が多いのだ。

多くの人々が無関心な一方で、アイヌが多く暮らす北海道を中心に、民族に対する差別は続いている。以前ほどではないと言われているが、学校やSNS上などでアイヌに対する差別は繰り返されている。それらを受け、今年制定されたアイヌ新法では、アイヌに対するヘイトスピーチを禁じる文言が盛り込まれた。アイヌは一部の根強い差別と、多くの人の圧倒的な無関心に囲まれて、現代を生きている。

長野いくみさんは、1984年、住民の7~8割がアイヌだといわれる北海道平取町二風谷地区に生まれた。彼女は、平取町役場のアイヌ文化振興対策室(現アイヌ施策推進課)で、アイヌ民族に不可欠な生活・自然環境を復元・発展させる「イオル再生事業」や、大学生がアイヌ文化を合宿形式で学ぶ「大地連携ワークショップ」などに携わっていた。

2019年からは、2020年北海道白老町にオープン予定の民族共生象徴空間「ウポポイ」(国立アイヌ民族博物館や慰霊施設などの総称)の職員として、アイヌ文化の継承・発展に努めている。必ずしも自らがアイヌであることにポジティブだったわけではないという彼女に、話を聞いた。

──最初にお会いしたのは平取町役場時代でしたね。アイヌ文化にかかわる仕事をしたかったのですか?

実は看護師になりたかったんです。看護師だったおばの影響を受けたのだと思います。また、学生時代に入院したことがあったのですが、看護師さんたちの対応が素敵で、自分もその道に進もうと決意しました。

高校卒業後、資格を取るため専門学校に進学しましたが、自分には向いていないと考えてあきらめました。しかし、奨学金の返済をしなくてはならなくて、どこでもいいから働こうと思い、応募したのが平取町役場でした。

文=谷村一成

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