──子供1、子供2、子供3(口ぐちに):ウイルスにかかっちゃったらどんな感じなの? ……体はどうなっちゃうの? ……ウイルスにかかったらどんな気分?
カール:ウイルスに感染すると、ものすごく具合が悪くなります。どうして具合が悪くなるのかといえば、ウイルスは気道の細胞にやったことを肺の細胞にもするからです。
つまり、鍵を使って肺の細胞の中に入り込んで乗っ取って、細胞全体をウイルス製造工場に変えてしまうんです。乗っ取られた細胞はウイルスを何百万個も作り出しますが、そのぶんどんどん疲れていきます。そんなこと、長く続けることはできません。感染した細胞はやがて死んでしまいます。細胞が死んだら、肺に痛みを感じます。でも具合が悪くなるのには、別の意外な理由もあるのです。
わたしたちの体は「免疫系」というものを持っています。免疫系は、ウイルスとかばい菌とか、体によくないものと戦って体を守ってくれる仕組みです。実際には免疫細胞というものが体じゅうをパトロールして、問題がないか調べてまわっています。そしてウイルスや感染した細胞を見つけると、免疫細胞は仲間の免疫細胞を呼び寄せて、みんなで攻撃を開始します。
免疫系は、ウイルスと戦ってやっつけることができる「抗体」という武器を作ることができます。
ウイルスに感染すると、わたしたちの体の中で大きな戦いが始まります。コロナウイルスに感染したらほとんどの人が熱を出しますが、これは免疫系が戦っている証拠なんです。体温が上がるのは、免疫系が大量の熱を発生させてウイルスをやっつけようとしているからです。
マイケル:なるほど。熱が出るのは、ウイルスがやっていることではなく、わたしたちの体の免疫系がウイルスと戦っているからだ、ということなんですね?
カール:そのとおりです。気分が悪くなったり、体のあちこちに痛みを感じるのは、免疫系が大量に吐き出している分子のせいでもあります。しかしこれは戦いの一部にすぎません。
感染者の20%ほどは、この戦いで免疫系が負けてしまったせいで症状が重くなります。むしろ、免疫系そのものが体に悪い影響をおよぼすようになるんです。
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カール:ウイルスとの戦いでは、ウイルスだけをピンポイントで攻撃してほかは一切傷つけない正確さが求められます。免疫系はたいていの場合はうまくやっています。それでもときどき、免疫系がうまく機能しないことがあります。
うまく機能しない理由は、混乱しているからかもしれませんし、感染した細胞を体外から侵入してきた巨大な細胞と見なして大げさな反応を起こすからかもしれません。この大げさな反応は、まわりの細胞にダメージを与えます。言ってみれば、スナイパーのように1発の銃弾で仕留めなければならないところを、大砲でドカンと吹き飛ばしてしまうようなものです。
マイケル:つまり、コロナウイルスに感染して重篤な状態になるのは、たいていは「わたしたちの体そのもの」がウイルスに反応するから、ということなんですね。
(後編)に続く>
(c) 2020 The New York Times