テクノロジーが引き起こす教育革命
OECDはテクノロジーが対面教育に取って代わっていく様子を追跡しています。「物理的にある学校を単にデジタルに置き換えることを超えた、まったく新しい方法が生まれるのを見るのはとても刺激的です」と、OECD教育・スキル局のトレーシー・バーンズは話します。
日本では、民間企業が政府のデジタルプラットフォームを利用して、学校閉鎖により在宅学習を強いられている子どもたちに無料のオンラインコースを提供。生徒と保護者が学ぶ内容を選択できるようになっています。
「閉鎖される学校が増える中、私たちは身体的、心理的、そして学業の面において最も弱い立場にある子どもたちに特別な注意を払わなければなりません」と、バーンズは続けます。「すべての対応は、教育的・社会的不平等の深化を避けることを念頭に置いて、策定されなければなりません」。
「システムがeラーニングへ大きく移行することで、接続性、デバイスへのアクセス、スキルレベルにおけるデジタル・ディバイドがさらにより重要になってきます」。
バーンズは、実際の学校が、今すぐにeラーニングに取って代わられると考えるのは時期尚早であると言いますが、OECD教育・スキル局長のアンドレア・シュライヒャーは、この危機を、教育を進めていく方法を再考する機会だと捉えています。
シュライヒャーは、学校と教師はもはや「知識提供システム」とみなされるべきではなく、教師は、自分たちが何をどのように教えるのかについて、より大きな権限を与えられるべきであると主張しています。
教師の指導環境にも変化を
「教師や教育指導者にはそれを実現する能力や専門知識がないので、これまで以上の自主性を与えることはできない、と言う人に多く出会います」と、シュライヒャーは付け加えます。「しかし、調理済みのハンバーガーを温め直すことだけを求められている人たちが、マスターシェフになれる可能性はほとんどありません」。
「教育に対する現在の規範的アプローチを単にこのまま続けていては、この危機を耐え抜くことはできません。この危機において、教師は、彼らの授業を他の媒体で再現するだけでなく、学ぶ内容、方法、場所、時間に関して全く新しい対応の導入を求めています」
OECDが実施した、国際教員指導環境調査「TALIS」の結果を引き合いに出しながら、シュライヒャーは、テクノロジーは教室でより大きな役割を果たすべきだと話します。「テクノロジーは教え方や学習方法を変えるだけでなく、教師の役割を、学んだ知識を分け与える役割から知識を共につくっていく役割へと、高めることもできるのです」。
この調査では、世界中の教師から、教室でのデジタル技術不足が学習の妨げとなっているという回答が寄せられています。また、プロジェクトや授業で生徒にコンピュータを使わせることができた教師は全体の半数を少し超える程度でした。
さらに、テクノロジーの使用における専門的な開発トレーニングを受けたことのある教師は60%に過ぎず、約20%がこの分野での開発が緊急に必要だと答えています。新型コロナウイルスのパンデミックにより教育がどのように進化していくかを垣間見えたことで、この状況は変わっていく可能性があります。新型コロナウイルスが終息し学校が再開されたとき、その姿は以前とは全く異なるものになっているのかもしれません。
(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)
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