──当時、日本ではライバーの成功事例がない中、ライバーとして活動する。掲げたテーマが「ライブ配信の可能性を探る」というのもユニークですね。
例えば、17 Liveは2017年9月に日本に上陸し、この2年で国内のライブ配信市場シェアの63.9%(2019年10月時点)を獲得しているんです。それでも17 Liveのことを知っている人はあまりいないですし、「ライブ配信やってるよ」と言うと、「それって水商売でしょ」と言われることがあります。もちろん水商売も尊いお仕事です。
実際にライブ配信している人たちも「これは会社に絶対言えない」みたいに隠しますし、肩身が狭い思いで活動している。いまユーチューバーはテレビにも出演し、市民権を得て、子どもたちも「将来はユーチューバーになる」と言うようになっている。
一方で、ライブ配信はまだまだそうではなく、その問題を解決したい。また、ライブ配信について、ライバーの視点、ビジネスの視点からも盛り上げていきたい。そんな思いで、「ライブ配信の可能性を探る」をテーマに掲げて、ライブ配信をやっていくことにしました。
不完全であることが、強みに
──知識もゼロの状態でスタートされて、どのように人気を集めていったのでしょうか?
ライブ配信は少し特殊で、他のSNSとファン属性が異なる傾向にあるんです。例えば、私のインスタグラムのファンは同性同世代の女子が多いですが、ライブ配信は年齢層が高い男性ファンが多く、あまりツイッターやインスタグラムに馴染みがない、そのため外部からの集客ではなく、いかに内部でファンをつくるか、を意識しました。
振り返って見て、1番大事だったのは“継続”ですね。世の中にいるライバーは私だけではなく、他にもいます。ライバルがいる中で“私”を知ってもらうためには、とにかく接点をたくさん持たなくてはいけない。ライブ配信は結局のところ、人と人とのコミュニケーションなので、接点をたくさん持った方が気にしてもらえる可能性が高いです。一度配信に来ていただいた視聴者の方の名前や出身地などは覚え、二度目来ていただいたら公式LINEに登録していただいていました。公式LINEでは配信の通知はもちろんライバーの活動を綴っており、SNSに慣れていない層とも配信以外で接点ができます。
あとは目標や成し遂げたいことに共感してもらい、納得してもらうこと。私自身もファンのみなさんに共感してもらったからこそ、長いこと応援してもらえたと思っています。そういう意味で、完璧すぎないことも大切です。ファンの多くは「補ってあげたい」と思っているので、その気持ちを満たしてあげる。
私自身、完璧とは程遠くて苦手なことがたくさんあります。今でこそ話すことはだいぶ慣れましたけど、当初は話すことが苦手で自分の意思を伝えたり、言語化することが全然できませんでした。ただ、ファンのみなさんから「自分の思いを伝えたらいいよ」とアドバイスをいただいてからは、自分の意思が固まり、話せるようになりました。ファンの方と苦手を克服していったんです。
ファン企画の激辛完食
とにかく色んなことを試しましたね。ギフトをいただいた対価としてファンの方の無茶振りに応えたり、企画立案権すらも対価として提供していました。不完全であることが強みになり、ファンにプロデュースしていただく感覚でコンテンツを提供してもらう形にしました。
こうやってファン参加型でいろんなことを試し、場数をこなしていくうちに少しずつファンもついてきてくれたような気がします。