経済・社会

2020.04.14 20:00

新型コロナ対策で独自路線を貫くスウェーデン その理由と現在地


コロナ問題により、私の場合は勤務時間が20%短縮され、毎週金曜が休みとなった。つまり、会社は私に80%の給与を払うこととなる。そこに国から15%の補償が加わり、さらに会社が1%上乗せする。つまり、普段の収入の96%が得られるようになる。毎週金曜が休みになるにもかかわらずだ。

少々不思議ではあるが、会社を倒産させて失業保険で予算を使うのか、補償という形でお金を使うのか、国はこの2つを天秤にかけて、後者を選んだと推測できる。

なお、私が勤める会社では、60%の時短勤務をとなった人が最も多い。つまり週に2日働くだけだ。しかし、収入は国からの補助で92.5%が保証される。こんなにうまい話があっていいのかとも思うが、この施策は向こう半年続き、必要であれば年末まで延長できる。

これらの調整は、労組、会社、国の3者で、1週間以内に速やかに行われた。しかし、私の周囲の友人3人に聞いてみたところ、3人ともこの話には驚いていた。彼らは通常通り100%働いて給与をもらっていたり、時短勤務を強いられ、そのぶん収入がカットされたりとさまざまだ。

国内には独自路線への反発も


新型コロナウイルス対策で独自路線を行くスウェーデンだが、国内では反発の声も少なくない。

現に子供たちが通う就学前学校や小学校は出席する生徒の数が極端に少ない。日によっては半数程度しか出席しない日もある。体調不良で欠席をした場合、症状が回復してからも2日間は在宅しないといけないというルールがあるが、長期間登校していない生徒もいる。6歳の長女の友人は、どうやら親の考えで長期間の在宅となっている。

また、政府は外食産業に対して一定のルールを設けているが、これを守らない店も少なくない。ビュッフェ形式は厳禁で、テーブル間の距離も適切に保たなければならないが、近所のピザ屋では平然とサラダバーが設置され、座席もいつも通り。ここに1人感染者が現れれば、たちまちクラスターが起きることは確実だ。

スウェーデンにはさまざまな背景を持つ移民も存在し、必ずしも全ての住人が強い民主主義的思想を持っているとも限らない。政府の呼びかけを無視する者もいれば、そもそも呼びかけが届いていない層がいるのも事実だ。

人種差別的な問題も起きている。ストックホルムの一部では感染の拡大が顕著に見られるが、それは難民が多く暮らしている地域だ。彼らは1つの住居に2家族で暮らすなど、いわゆる「三密」の条件を日常的に揃えてしまっている。

そうした人々の仕事がバスの運転手、タクシードライバーなど、見知らぬ人と頻繁に接触する機会があることも危険因子だ。そこには言葉の壁もあるため、政府はさまざまな言語での情報発信も行っている。


ストックホルム市内のレストラン(4月11日撮影、Getty Images)

スウェーデンはロックダウンこそしていないものの、政府の要請に基づき、在宅勤務は広く浸透し、レストランではテイクアウトのみの営業も増えている。私も、週末に予定されていた友人との約束はすべて延期となった。

ロックダウンをしていないからと言って、何もやっていないわけではない。医療崩壊を招かないために、国民は自発的に行動している。それこそ「自粛」なのだと思う。感染拡大防止、経済、そして人権を、ギリギリでバランスさせるスウェーデンのやり方がどこまで通用するのか、私自身、とても興味深い。

[訂正]病床数の公表方法とその数やキャパシティについて、情報をアップデートいたしました(4月20日)。

連載:スウェーデン移住エンジニアのライフ&ワーク
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文=吉澤智哉

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