前年比で3倍以上の被害額
前出の警察庁生活安全局の資料によれば、利殖勧誘事犯には投資詐欺やマルチ商法などが含まれるが、令和元年における同事犯の検挙件数は41件と前年と同数であった。しかし、被害総額は約1038億円となっており、前年から3倍以上も増加していることがわかる。
出典:警察庁生活安全局「令和元年における生活経済事犯の検挙状況等について」
注意すべきは、利殖勧誘事犯における被害額が急増したこと以外にも、この5年間における相談当事者の年代が高齢者から若年層に移ってきているということだ。平成28年の時点では、相談当事者のうち65歳以上が全体の57.5%を占めており、20歳代は3.8%、30歳代は4.0%だったが、令和元年では65歳以上の比率は23.5%に減少し、一方で20歳代は17.7%、30歳代は11.6%と急増している。
出典:警察庁生活安全局「令和元年における生活経済事犯の検挙状況等について」
これらの数字からわかることは、詐欺被害は高齢者だけが被るものではなく、むしろ自分だけで契約が結べるようになったばかりの新成人や大学生、社会に出始めたばかりの新社会人なども危険だという認識を持たないといけないということだ。
2月から、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の影響で、株式市場も実体経済も急降下している。このように将来に対する不安を持つ人が増えてくると、残念ながら詐欺師たちが積極的に動き始める。不安になればなるほど、何かに頼りたくなるのが人間の性だからだ。
詐欺師は、得てして「必ず」とか「絶対」という言葉を用いて、元本や将来のリターンを保証する。しかし、世の中にそんな「おいしい話」は存在しない。仮に存在したとしても、一般庶民に話がまわってくることはない。
多くの日本人が想像していた以上に、新型コロナウイルスの影響は大きく、これから発表される経済指標や企業決算、休業や倒産のニュースの増加などにより、その影響の大きさは実感することになるだろう。それとともに、詐欺被害も増加することが予想されるため、みなさん、ぜひ注意していただきたい。
連載:0歳からの「お金の話」
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