詐欺師は手を変え、品を変えてくる
3月26日、東京都生活文化局は、「大学生等に借金をさせ、投資取引に係る高額なUSBメモリーを販売していた3事業者に業務停止命令」というプレスリリースを発表した。今回、業務停止命令を受けた企業が行っていたのは、過去の本コラムでも紹介したものと同じ投資詐欺だった。詳しい内容は次のようなものだ。
「投資でかなり稼いでいるすごい人がいる。話を聞かせたい」このような甘言で、まず勧誘者が友人や後輩を喫茶店などに誘い出す。そこには「投資で稼いだすごい人」がいて、「このUSBを使ってバイナリーオプション取引をすれば、資産が増やせる」と話し、約54万円のUSBメモリーの購入を勧める。
「お金がない」と断ると、「みんな、お金を借りて買っているし、投資ですぐに返せる」と消費者金融や学生ローンでの借金を勧める。ローン申請の方法については丁寧に指導をしてくれるというが、その指導には虚偽申告などの違法行為も含まれている。
今回の業務停止を受けたケースでは、自分自身が勧誘者となって友人や知人に購入させた場合は6万円の紹介料がもらえるという制度もあったが、当然、USBメモリーで大儲けできるわけもなく、損失を埋めたい被害者が購入後に加害者側にまわるという「ネズミ講モデル」が組み込まれていたという。
このような投資詐欺が検挙されていくのは喜ばしいことだが、詐欺師側は手を変え、品を変え、新たな手法を開発してくる。警察庁生活安全局が3月に発表した「令和元年における生活経済事犯の検挙状況等について」には、USBメモリーを利用した投資詐欺以外の事例も紹介されている。
それによれば、投資コンサルティング会社の経営者が海外事業で成功しているとして、同社へ出資すれば月利2~4パーセントの配当及び1年後の元本保証を約束するという説明をして、全国の約1万3000人から約459億円をだまし取っていたという。この件では、会社経営者の男ら10人が詐欺罪で、上位会員ら14人も出資法違反で検挙されている。
それ以外にも、健康食品等販売会社の代表取締役が健康食品の販売会に参加した高齢者たちに対し、株式上場や新規事業開始の予定がないにもかかわらず、「東証マザーズに上場申請する」「サービス付き高齢者住宅事業を開始する」などの虚偽情報を与え、同社の社債販売名目で8県の約500人から約15億5000万円をだまし取っていたという。本件においては、1法人16人が詐欺罪等で検挙されている。
このように投資詐欺は投資対象や仕組みを変えながら、将来に不安を抱える学生や高齢者を対象に「おいしい話」を持ち掛けてくる。