「べき論」からの脱却 |逆境を生き抜く組織カルチャー Vol.1

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新型コロナウィルスが世界で猛威をふるう中、日本も例外ではなく、闘いは長期戦の様相を呈している。先が見通せず、確固たる答えもない中で、政府、自治体、企業、あらゆる組織が目の前で起こる前例のない課題への決断や選択が迫られている。

有能なリーダーがいる場合は、リーダーに任せればよいかもしれない。しかし、それだけでよいのだろうか。「不確実な時代」に生き残る組織とは、どのようなものだろうか。

シリコンバレーの著名ベンチャー・キャピタリストで、前著『HARD THINGS―答えがない難問と困難にきみはどう立ち向かうか』(日経BP社)が日本でもヒットしたベン・ホロウィッツ。彼が昨年秋に上梓した『What You Do Is Who You Are』(邦訳版は『Who you are 君の真の言葉と行動こそが困難を生き抜くチームをつくる』日経BP社より4月17日発売予定) では、状況が良い時も悪い時にも機能する組織のカルチャーがいかに重要であるかが述べられている。

では、カルチャーとは何だろうか? ホロウィッツ氏は著書の中でこう述べる。

「カルチャーとは、リーダーがいない時に企業がどのような決断するか、ということだ。社員が毎日直面する問題を解決する際に使う一連の思考や行動様式である。彼らが誰も見ていないときにどのようにふるまうかである。カルチャーが系統的に存在しなければ、彼らの行動の3分の2は偶発的であり、残り3分の1は間違っているだろう」

実際に日本で社員が主体的に動き、逆境に強い組織カルチャーをつくるには、どうすれば良いのだろうか。

今回、米国で革新的なリーダーシッププログラムを運営するミネルバ大学に協力をお願いし、日本、海外の多くの事例を知る組織・人材開発の最前線にいる人たちに話を聞き、「逆境を生き抜く組織カルチャー」について探る連載をスタートする。

第一弾は、ミネルバ大学「Managing Complexity」プログラムの講師であり、日本のパートナー企業とともにイノベーションを起こす組織・人材開発、自律型組織開発に取り組む黒川公晴氏に話を聞いた。前・後編全2回でお届けする。

黒川氏は、2006年外務省入省後、米国で組織開発を学び、ワシントンDC、イスラエル/パレスチナに勤務。その後日米安保、国際法など様々な分野で外交を手がけ、総理大臣、外務大臣の通訳を務める。その後外務省を退職し、小学校の同級生や幼馴染5人とともに合同会社こっからを福岡県糸島市に立ち上げる。

物事に本気で向き合うことでわくわくする「Playful(プレイフル)」をキーワードに、企業のエンパワメントやコミュニティデザイン事業を行っている。今年3月には、オランダ発の脳科学に基づくファシリテーション・メソッドを広める一般社団法人Brain Active withを設立し、活動の幅を広げる。


合同会社こっからco-founder/代表社員 黒川公晴

──外交官のキャリアを捨て、合同会社こっからを立ち上げたのはなぜですか?

人と人、人と組織のあり方を探求したかったからです。外交の場で難しい交渉、折衝を行っていました。政府と政府、組織と組織の交渉ですが、結局は個人と個人だな、と実感する場面が多くありました。例えば有事の際、外国政府と緊急の協力が必要な時などは、それまでの関係性がものを言います。普段から密に連絡し合う仲間がいると、災害時に協力し合うことができます。「こいつは話せるな」と思ってもらうことが重要でした。
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文=岩坪文子

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