Ogilvy & Matherといったグローバル・トップエージェンシーのクリエイティブ・ディレクターとしてキャリアを積み、これまでマクドナルドやコカ・コーラ、ネスレ、VISAといったグローバル大企業だけでなく、多くの地元企業やスモールビジネスのブランディングを導いてきた。
シカゴ大学で15年講師を務め、今年11月には共著「Global Brand Management」(Kogan Page刊)を上梓する“ブランドのグル”に、経営者とブランディングについて話を聞いた。
──グローバル・マーケティング会社で、また独立した後も多くのグローバル企業や地元企業の顧客とブランディングの仕事をされてきました。共通点、相違点はありますか?
まず、どの企業も利益を出したい。この点は共通しています。どれくらいのスピードで利益を出したいのか、また誰がその企業を所有しているのかで課題は異なります。
例えば、家族経営の非上場企業の場合、家族の状況が会社に大きく影響します。父親が創業者で、まだ元気に事業をコントロールしていれば、父親に知恵があります。問題は、彼の子どもや、マネージャーに事業を承継する場合に多く起こります。ビジネスにおけるすべての力関係が変わり、ブランドも大きく変わります。
また、ネスレやユニリーバといった世界的にビジネスを展開するグローバル企業とも仕事をしました。
ブランディングをうまく出来ているグローバル企業の特徴は、世界のどこでビジネスをやっていようが、優れた「一貫性」があることです。地球のどこであろうが従うべきガイドラインがあります。彼らが成功しているのは非常に体系的で、システムが整っていて、規律があり、マーケティングに投資しているからです。
──これまで相談があった企業に共通の課題や問題点はありますか?
例えばですが、最近、あるアメリカ国内の企業からグローバル展開をしたい、という相談がありました。彼らは海外に進出するために、私にごく具体的な問題の解決を依頼してきました。またある企業は、新しいブランドを立ち上げるので私にアドバイザリーボードに就いて欲しい、と依頼してきました。
共通するのは、当初は特定の事情に即した具体的なアドバイスを求めている、ということです。しかし、実際に関わってみると彼らがブランドにまつわる基本的なことができておらず、それに気づいてもいないことが多くあります。