病気の子どもたちは、自らの免疫力の低下などから、人と接触できない状況に立たされることがある。時には家族との面会にさえ制限がかかる場合もあるという。現在、休校中の子どもたちの環境は、そのような状況のしんどさにも通じるため、「病弱教育」の考え方を活かしてほしいと副島さんは語る。
「僕が病院などで子どもたちとかかわるときに大事にしているのは、たとえガラスやカーテン越しでも、限られた時間であっても、対面してかかわることです。いまの新型コロナウイルスによる状況でも同じことが言えます。
ICTを使って画面越しに話すことも大切ですが、人間は、人とかかわるとき、視覚と聴覚以外の感覚も使っています。相手に触れたときの温もり、その人に漂う雰囲気、2人の間の空気感などです。こうしたことを含めたかかわりは、人が成長し、発達し、回復し、つまりは生きていくために大事なことだと考え、とりわけ大切にしています」
学校や放課後、友達と一緒に自由に過ごす時間が突然失われ、児童館や図書館も閉鎖されている地域が多い。感染者の増加に伴い、遊ぶことのできる時間や場所も徐々に少なくなってきている。
「子どもたちは、いま、とても頑張っていると思います。大人と同じように、また、大人以上に寂しいし、怖いし、不安です。普段は、何か心配なことがあっても、友達と遊んでいるときには、心配がどこかに飛んでいくのが子どもの力強さなのですが、1人で家にいてずっとゲームをしている、そばに誰もいない、話す相手がいないという状況では、不安なことやしんどいことが浮かんできて、それが大きくなってしまう。大人がどうにかしてそうならないように保証することが大事なのです」
では、子どもたちにとって、具体的にどのようなことが必要なのだろうか。
「子どもにできるだけ触れてあげてほしいと思います。『触れる』というのは、肌と肌で触れることだけではありません。眼差しで触れる、優しい雰囲気で触れることも『触れる』ということになります。一緒においしいものを食べてニコッと笑う。おいしいねと言う。味覚や嗅覚も通して、子どもに触れる必要があります」
大人の不安やストレスは子どもに伝わっている
「また、子どもは、しんどいときに、自らの年齢よりも少し幼くふるまうなどして、エネルギーを貯めようとします。心理学の用語で『退行』と言いますが、わかりやすく言えば赤ちゃん返りのような状態です。いつもより甘えたいと思っていても、なかなかストレートにだっこしてとは言えない。これは、小さなお子さんだけでなく、小学生や中学生でも起こります。中学生になっても、何も言わずにお母さんの膝にゴロンと寝転んでくることもあります」
素直な甘えではなく、違う表現になることもある。「なんか背中が痛いんだけど」「肩が痛い」「熱があるかも」などと子どもが言ったときには、それに対して「ゲームのやりすぎでしょ」「これで熱を測りなさい」と返すのではなく、「どうしたのかな?」と肩や背中を撫で、おでこに手を当てるなどしてあげてほしいという。
「子どもたちからのそうした声は、甘えたいというサインです。それを見逃さずに、できるだけキャッチしてほしい。そのときも、『甘えたいなら言いなさい!』ではなく、『なんかちょっと元気ないわねえ』『疲れちゃった?』『ちょっと寂しいのかな?』などと声をかけてください。
年齢の高いお子さんは、そういう声をかけても気恥ずかしいので、『別に』『平気』と返ってくるかと思いますが、その子の変化や感情に気がついている人がいることを伝えてあげるのがとても大事です。それだけで、子どもたちはいまの頑張りをもう少し続けられるようになる。あなたの気持ちに気づいているということを、ぜひ言葉や態度で伝えてあげてほしいと思います」