3. 人種のるつぼ
ベルリン市域の人口は360万人、さらに広いベルリン・ブランデンブルク大都市圏地域の人口は590万人ほどだが、そこには190カ国を超える海外出身者が暮らしており、英語は共通の第二言語になっている。
PWC、Deutsche Startup de、net STARTの3社によるレポート「Deutscher Startup Monitor 2017」によれば、スタートアップの従業員の50%が外国人従業員で、移民はスタートアップの80%にとって有益であると考えられている。
4. 低コストによる競合優位性
アドテクノロジーのスタートアップ、hybrid.aiで働く中本菜摘氏によれば、「ベルリンは、スタートアップ都市として有名な他の都市と比べると、家賃や生活コストは大幅に抑えられる。ワンルームのアパートの家賃は月750~870ユーロ、人気のシェアハウスでは400~500ユーロ。オフィススペースも手軽かつ安価にレンタルできる。そのため、開発や人材により多くの資金を投下でき、スタートアップが育ちやすい環境が生まれている」という。
5. ビジネスとアートの融合
ベルリンの中心には、「Futurium」という科学、芸術、デザインを通じて未来を体験できる施設がオープンしており、「Tech Open Air」や「re:publica」など、芸術と起業家を融合する国際的なイベントが開かれている。また、アートスタジオをオンラインレンタルするサービス「Stusu」を提供するスタートアップもある。
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前述のHARTFISHのHartlmaier氏は、「ベルリンの壁の崩壊後、多くの歴史的建造物が不法に占領されたが、創造者、芸術家、活動家によってそれらが再建され、いまでは700ものアートギャラリーが存在する芸術的で創造性豊かな街となった。デジタル時代を牽引する国際的なリーダーや起業家にとって、アートと起業家精神やテクノロジーが混ぜ合わさり、新たなインスピレーションが湧く最高の街」だと語る。
6. テック分野に強いエコシステム
スタートアップコミュニティスペースFactory BerlinのCEO、Nico Gramenz氏は、「ベルリンはヨーロッパのIoTとブロックチェーンのハブに成長した。テック人材と巨大企業などが共同で問題解決に向かい、経済的成長を促進している。また、EUのなかでフィンテックへの投資額が最も大きく、関連スタートアップはじめ、多くのAI、ビッグデータのスタートアップ企業が名を連ねている」と言う。
ブロックチェーンのハブになった理由として、現地在住で「ネクストシリコンバレー『次の技術革新』が生まれる街」の著者である矢野圭一郎氏は、以下の5つを挙げた。
1. 世界最大級のハッカー組織、カオスコンピュータクラブの本拠地
2. 暗号通貨/プライバシー/モバイルバンクの規制の発信地(GDPR、PSD2など)
3. EU内のタックスヘイブンを利用した法人
4. 高度ITエンジニアの集積
5. カウンターカルチャーな都市文化