誰でもウイルスを持っている可能性がある
新型コロナウイルスの無症状比率が0%にならない限り、気分が良さそう悪そうに関係なく、あらゆる人との接触を避け、距離を置くことが大切である。新型ウイルスの検査がいまよりはるかに広い範囲で頻繁に行われるようにならなければ、どんな相手であれ、感染しているかどうかを見きわめるのは不可能だからだ。
無症状とは、症状が出ないという意味であるのを思い出してほしい。無症状と考えられる15.5%から20.2%の感染者以外にも、軽い症状しか出ない人がいる。人によっては、外目にほとんどわからない症状しか出ない場合もある。言うまでもないことだが、症状にいつ気づくか、どこまで耐えられるかは人それぞれなのだ。気分が悪いのは、体調のせいなのか、それとも映画館で『きみに読む物語』を3回続けざまに観たせいなのか判別するのは難しい。
さらに言えば、あとで目に見えて重い症状を現す人も、感染してしばらくは無症状でいる可能性があるのを忘れないでいただきたい。
一例を挙げれば、査読前の医学論文を掲載する「メドアーカイブ」というサイトに投稿された論文には、シンガポールと天津から届いたデータの分析が載っている。その分析によれば、シンガポールで起きた感染の半分近く(48%)は「症状がはっきり出る前の感染源」によるもので、天津ではそれが62%を占めているという。むろん「メドアーカイブ」は、専門家の審査を経て出版する権威ある科学雑誌ではない。だからその結果は、「話48分の1」に割り引いて聞かなければならないかもしれないが。
忠告はさておき、ここで紹介した二つの研究は、症状の出ない感染者の割合を知るのに大変役立つ。今後の感染数の推移や致死率を計算する助けになってくれるはずだ。同時に、感染率の急速な拡大を防ぎ、感染を避けるために、どんな人とも距離を置く必要があることを改めて教えてくれる。そう、相手がどんな人であろうと。