コロナウイルスはインフルエンザではない
この結果は、無症状比率という面では新型コロナウイルスがインフルエンザに似ている可能性があることを示している。「Emerging Infectious Disease」誌は、インフルエンザの無症状比率を5.2%から35.5%という95%信頼区間から19.1%と概算している。似た者同士というわけだ。
もっとも、似ているからと言って、新型コロナウイルスをインフルエンザと同じと考えてはならない。コロナウイルスはインフルエンザとは別物だ。世界的流行病は季節病とは違う。しつこいようだが、新型コロナウイルスはインフルエンザではない。似て非なるものなのだ。
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新型コロナウイルスの15.5%から20.2%という範囲は、「感染症国際ジャーナル」に掲載された二つ目の研究チームの論文に出てくる数字と合致している。この論文の未校正原稿はオンラインで読むことができる。たぶん出版後にも論文の内容に大きな訂正はないはずだ。
この研究は、中国の武漢から避難した565人の日本人に関するデータを分析したものである。おもに北海道大学の研究者で構成された研究チームによって、新型コロナウイルスの検査で陽性と確認された人の約3分の1(30.8%)が無症状であることが明らかになった。95%信頼区間は7.7%から53.8%の範囲だった。かなり高めの数字だが、その分95%信頼区間の範囲も大きくなっている。
二つの研究を比較すると、クルーズ船調査のほうがいくらかクリーンだ。「完全に閉じ込められた人々の間で何が起きたか」を把握しやすいという意味である。二つ目の研究は、対象にした565人のうちどれぐらいの人が互いに接触したかわからず、これが代表サンプルになり得るのかどうかはっきりしない。それに比べてクルーズ船調査は、これまでのところ、一定期間ウイルスにさらされた人々全員の身に起きたことを追跡する貴重な機会を与えてくれている。
むろんクルーズ船調査も研究の一つでしかなく、数多くの弱点を持っている。概して、検査というものは完璧ではあり得ない。しかも乗船者全員が検査を受けたわけではない。もしあなたが、「一般集団を的確に代表する人々の無作為サンプルが欲しい」と言われても、おそらく真っ先にクルーズ船乗船者が頭に浮かぶことはないだろう。
その理由の一つは、老齢の乗船者が多いことだ。また、感染者とその症状についての情報も十分とは言えない。感染者が他にどんな病状を抱えていたか、症状のあるなしをどう判断したかといったことが不明だからだ。
それはともかく、二つの研究によって、少しも気づかずにウイルスを運んで拡散している人が少なくないことが裏付けられた。だから体調が良いからといって、以下のような場所に出かけてもいいことにはならないのだ。