ただし、オープンソースのサービスで上場し、さらにその後も成長を続けて大成功した会社は世界を見渡しても私が以前所属していたレッドハットくらいです。上場までたどり着いても、その後のエンタープライズ市場で苦戦を強いられたりしています。要は単独では成立しづらいビジネスモデル的なのです。
私たちはオープンソースが好きでありながらも、妄信的に信じるのではなく冷静にビジネスモデルを構築し、オープンソースのカルチャーとビジネスが両立できる解を模索しました。
──「営業ドリブンの会社にする」と創業時に決められたことに通ずる部分を感じます。
創業メンバー3人のバランスが良かったのだとつくづく思います。
私はひたすら営業とファイナンス、経営全般を担当しながら、CTOの太田とビジネスモデルを一緒に考えていました。
私は太田のことを「スーパーセールスエンジニア」だと思っているほど、彼はお客さんを回るのが好きです。エンジニアでありながらも、実際の顧客需要をドライバーにしたプロダクト管理の視点を持ち続ける彼がいたからこそ、「営業ドリブン」の会社にできました。
そして「Fluentd」を開発した古橋は、ひたすらコードを書いているような生粋のエンジニア。しかも世界のデファクトスタンダードになるようなソフトウェアを作れる、超トップクラスのエンジニアです。
アイディアや理想だけでなく、ビジネスとして実践できるメンバーが初期から集まっていたことが、ゼロイチ立ち上げの成功につながったと思っています。
「ゼロイチ」フェーズで確認すべき3カ条
──次に、事業拡大フェーズにおいて大切にされていることをお教えください。
どんなスーパー営業マンでも、ゼロをイチにすることはできません。このフェーズを推進するのはあくまで創業メンバーの役割です。創業メンバーが売れない製品は、どの営業マンにも売れません。
この「ゼロイチ」を作る際にチェックすべき項目は3つです。作ったプロダクトが「お金を払ってくれる顧客がいるか」、「リピータブルか(継続性があるか)」、「経済合理性が成り立つか」の3点。
この3点をしっかり確認するのが「ゼロイチ」フェーズで、これさえ確認できればどんなプロダクトでもスケールさせることができます。
──「ゼロイチ」作りは創業メンバーの役割で、その後のグロースはチームの役割ということでしょうか。
グロースのためのチーム作りの前提として、「どんな顧客に、どんなパッケージで、どのように説明すると買ってくれるか」という、営業の「Playbook」と呼ばれる必勝マニュアルみたいなものを作る必要があります。先ほどの3点が確認できればそれが作れるようになります。
私たちも実績が何もない初期の頃はこれまで培ってきたご縁、いわゆる「Friends & Family」をベースに顧客開拓しました。そこから全く縁のなかった新規顧客の獲得に成功して、先ほど言った「Playbook」を作りました。
もちろんグロースさせる中でも細かいチューニングは発生しますが、根幹となる「ゼロイチ」のバリューがしっかりしていれば、「Playbook」をもとに営業リーダー・営業チーム主導で事業はグロースしていきます。
なので、「顧客がお金を払ってくれる人がいるか」、「リピータブルか(継続性があるか)」、「経済合理性が成り立つか」を「ゼロイチ」フェーズに確認すること。この見極めがその後の事業グロースも左右すると思います。
連載:起業家たちの「頭の中」
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