※本記事は2019年4月に掲載したインタビュー記事に加筆・修正を加えております。
競争優位性を生んだ「オープンソース2.0」構想
──創業初期はどのように事業アイディアを考えていかれたのでしょうか?
創業メンバーの私と太田、古橋は元々オープンソースのソフトウェアに携わっていたバックグラウンドがあります。なので「オープンソースを活用して新しいビジネスモデルを構築しよう」というコンセプトが発端でした。
目をつけたのは「ビッグデータ分析」。創業当時はビッグデータ分析を行う企業がいくつか出始めた頃でしたが、それをビジネス価値に変換できる企業というのはほとんどありませんでした。
そこで、その難しい部分を簡便化し、簡単にビジネス改善につながるビッグデータ分析が実現できるSaaS型のクラウドサービスを提供しよう、というのが最初のアイディアでした。
そこから古橋が起業直前に創業メンバーとして加わり、良質な「データ収集基盤」も合わせて提供しようという戦略が加わります。データ分析をするためには当然ながらデータを集める必要があるのですが、世の中には信頼できるデータ収集基盤があまりなかったのです。従ってその部分も良質なオープンソースソフトウェアとして提供しようということになりました。
オープンソースのデータ収集基盤で広くユーザーを集め、その何%かに「データ分析クラウドサービス」を使ってもらうという算段が当初の戦略でした。結果的に、このビジネスモデルがトレジャーデータの差別化要因になりました。
──もう少しそのビジネスの差別化要因についてお聞かせください。
端的に言うと「オープンソース+SaaS」のビジネスモデルです。
古橋が開発したオープンソースのデータ収集ソフトウェア「Fluentd」は、いまやMicrosoftも導入しているほど、データ収集ソフトとして業界標準となっているソフトウェアです。
オープンソースなのでこの「Fluentd」自体からはマネタイズしませんが、ここにSaaS型のデータ分析クラウドサービスを組み合わせることができれば、「Fluentd」が優良な顧客開拓ツールとなります。
技術的にも「Fluentd」のユーザーは、トレジャーデータのクラウドサービスが使いやすいような設計にしています。
一般的にオープンソースソフトウェアを提供する会社は、そのソフトウェア自体をマネタイズしようとしていたのに対し、私たちは別のSaaS型クラウドサービスを成長させるための潜在顧客リード生成ツールとして捉えた。
この「オープンソース2.0」とも言えるビジネスモデルが私たちの初期的な競争優位性でした。
オープンソースのカルチャーとビジネスを両立
──「オープンソース」のバックグラウンドを持った創業メンバーが集まったからこそ、「オープンソース2.0」の発想につながったのですね。
オープンソースには原理主義的なところがあって、みんな「オープンソースのカルチャーが好き」だったというのはあります。