さて、続いては10年代で最も人気のジャンルであるSUVに影響した2台だ。4台目が「トヨタRAV4」、そして5台目は「ボルボXC90」だった。
1994年にSUVのセグメントを築いたといえるRAV4は、なんと年間アメリカだけでも40万台を販売し、18年に最新版が登場して、さらにSUVジャンルを進化させた。日本COTY賞を受賞した5代目は、メインマーケットのアメリカのユーザー・テイストを尊重して、外観がマッチョで新しい4WDが搭載されているので、走りはオンロードでも、オフロードでも非常に充実している。
トヨタ・RAV4
5台目のXC90も画期的だった。フォード傘下にあったボルボは10年に中国のジーリー社に買収されると、デザイン部が自由自在にクルマ作りができるようになり、新しい関係の中でXC90のような美しい外観が生まれ、業界を圧倒するようなエンジンも手掛けることになった。パワートレーンは、ターボとスーパーチャージャーとハイブリッドを組み合わせた優れものだ。これからは、こういう燃費とパワーを両立させたパワートレーンを応用するメーカーが増えると思う。
6台目は、EVでもSUVでもない。辛口の英国人ジャーナリストでさえも絶賛する「アルピーヌA110」。アルピーヌは、フランスのルノー傘下のブランドで、ライトウェイトスポーツを作っている小台数メーカー。17年に登場したA110は1962年に誕生した初代A110を現代風に蘇らせたものだ。
このクーペを復活させたことで、アルピーヌというブランドは20年ほどの“冬眠”からカムバックした。252psを発揮する1.8Lターボのレスポンスは鋭く、ハンドリングもここ10年間の中で最も正確で気持ちよくコーナリングする車両だといえるだろう。このA110がポルシェ・718ケイマンの走りと並んだことで、業界では大好評。これからの車両も楽しみだ。
7台目は、ハイブリッドが超楽しいというハイパーカー。でも1台ではない。不思議なことに、13年にほぼ同タイミングで「ハイブリッドがすごい!」と唸らせられた3台が登場した。それは、ポルシェ918スパイダー、フェラーリ・ラフェラーリ、そしてマクラーレン・P1で、これまでのハイブリッドの概念を覆した。総合馬力が2700馬力を超えるこの3台は燃費を稼ぐためにハイブリッド化ではなく、どれだけ圧倒的なパワーを生み出せるかが勝負だった。
最後に加えておくが、前出の米「モーター・トレンド」誌によると、一般道でもサーキットでも楽しいトヨタ86と兄弟車のスバルBRZ、それにスズキ・ジムニーが、それぞれのセグメントに大きな波紋を起こしたそうだ。
20年代、SUVはそのまま主流の地位を固めていくだろうが、EVは果たしてどれだけ一般人の心に訴えられるかが鍵だ。