国際モータージャーナリスト「ライオンのひと吠え」

電動化の時代がいよいよ本格的になってきた。あのドイツのスポーツカー・メーカーのポルシェまでが、初の本格的な電気自動車(EV)を作ったからだ。「タイカン」というエポックメーキングなこのポルシェ車は、これからのEV作りを決定的に変えてしまうに違いない。

僕の各国の同僚はその性能、走り、パッケージングなどを絶賛しているけど、同車がどれだけ画期的なのか、いや革命的なのか。先週、ロサンゼルス・モーターショーに合わせて開催される合わせて開催されるワールド・カー・アワードの合同試乗会で、乗ってチェックしてみた。

試乗の日、僕は「すごい、大したもんだ! これぞ近未来だ!」と何回言ったことか。タイカンの運転席に座ってアクセルを踏んだ瞬間、2030年にタイムスリップしたような気分だった。その速さ、その走りは別の次元だ。まるで、名曲「ボヒミアン・ラプソディ」を初めて聞いた時の感動と同じだった。その曲は音楽業界を変えた。タイカンは自動車業界を変える。

2015年に、「ポルシェ・ミッションE」というコンセプトカーが発表されてから、自動車業界はタイカンの到来を待ちに待っていた。しかし、今年9月に発表されたそれは、僕らが期待していた以上の、異次元のパフォーマンスだった。



航続距離は420km以上、バッテリー容量80%までの急速充電はたったの22分。「ターボ」と「ターボS」の2タイプから選べるが、当然ガソリンエンジンが搭載されていないので、ターボ自体はない。名前だけだが、ポルシェらしい走りは見事だ。

ターボは680馬力、ターボSは750馬力を発揮し、しかもターボSの最大トルクはなんと1000Nm。モーターは前輪に1つ、後輪に1つという4WDレイアウトであり、バッテリー、インバーター、モーターなどはすべて超低いポジションに配置。実をいうと、タイカンの低い車高、そしてそのパッケージングは業界を圧倒している。その低重心は、911より低そうだ。 

パサディナ近郊の代表的なワインディングロード「アンジェレス・クレスト・ハイウェイ」で試乗した直後に、LAモーターショーで出会った某メーカーの元デザイン・トップに聞くと、「タイカンの作りと性能の凄さに圧倒されて、すべてのカーメーカーはどうにかタイカンを1台購入して、社内でバラしてその秘密を探るはず」と語ってくれた。

「特に不思議なのは、他のメーカーにはこんなに車高の低いEVが作れないのに、どうやってポルシェは911よりも低重心のクルマが作れたのか。調べたいですね」という。つまり、バッテリーとかインバーター、または2つのモーターをなぜそんなに低く載せられたのかが業界で小さな革命を起こしている。

文=ピーター・ライオン

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