ビジネス

2020.03.20

「企業大絶滅時代」のCEOに求められること

「C3.ai」CEO トーマス・M・シーベル

米AIベンチャー「C3.ai」の創業者で会長・最高経営責任者(CEO)のトーマス・M・シーベル。米オラクルの営業マンから起業家に転身。1993年、ソフトウエア会社「シーベル・システムズ」を設立し、2006年、オラクルに売却。2009年、C3.aiを立ち上げた。

米フォーブス誌の「世界長者番付」などにも選ばれ、昨年、上梓した『Digital Transformation: Survive and Thriveinan Era of Mass Extinction』(『デジタル変革─大量絶滅時代を生き抜き、繁栄する』未邦訳)がベストセラーに。

67歳の今もシリコンバレーで仕事に執筆にフル稼働のビリオネア・テック起業家が、デジタル時代の企業サバイバル戦略を語る。


──あなたは1980年代以来、米西海岸におけるテクノロジーの盛衰を見続けてきました。「大量絶滅時代」が到来したと考える理由を教えてください。

情報技術(IT)産業では、トランジスタに始まり、半導体やミニコンピュータ、パソコン、インターネットと、実に重要な変遷がいくつも見られた。この業界に足を踏み入れて40年になるが、80年代当時、グローバルな市場規模は約500億ドルだった。それが今では、3.5兆ドルだ。5年以内に9兆ドルになるだろう。

その原動力になっているのが、(仮想サーバーサービスの)エラスティック・クラウドコンピューティングとビッグデータ、モノのインターネット(IoT)、人工知能(AI)だ。この10年間で、ITに対する企業の考え方が激変した。

1980~90年代当時、ITシステム購入の意思決定を担っていたのは最高情報責任者(CIO)だったが、今やCEOが「デジタル変革」を担っている。どの国の企業を訪れても、CEOが直々に会合に臨み、決定を下す。

2010年に、初めて「デジタル変革」という言葉を聞いたときは、「何のことだ?」と当惑した。しかし、8年間、考え続け、デジタル変革の意味や、CEOが自ら指揮する理由がわかった。企業の存亡が懸かっているからだ。

現在、企業は未曽有のペースで消滅している。この19年間で、フォーチュン500社の52%が経営破綻や合併、再建で姿を消した。米イーストマン・コダックや米トイザらスの破綻など、いずれも、大量絶滅という事象が進んでいることを示している。

私はこうした事実を前に、ビジネスサイクルと進化生物学を関連づけて考えるようになった。進化生物学に照らせば、生物が進化によって新種を形成する「種分化」は、自然淘汰と「断続平衡」によって起こる(注:断続平衡=進化は、平衡・安定した期間と、一気に大変化が生じる期間で成り立つという考え方)。断続平衡には大量絶滅が伴い、地球上では5回の大量絶滅が起こった。恐竜が淘汰され、哺乳類がその空白を埋めたように、大量絶滅後には再種分化が起こり、新DNAを持つ新種の生物が生まれる。
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インタビュー=肥田美佐子

この記事は 「Forbes JAPAN 4月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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