ビジネス

2020.03.20

「企業大絶滅時代」のCEOに求められること

「C3.ai」CEO トーマス・M・シーベル


──あなたは著書の中で、CEOのアクションプラン(行動計画)10箇条を挙げています。デジタル変革を進める際、最も重要なことは?

デジタル変革が成功している企業では、CEOが自らの責任で変革を推進し、指導力を発揮し、命令を下す。組織をまとめ、予算を組み、追跡可能なプロジェクトを設定し、半年や1年など、短めのタイムフレームを決め、結果を求める。

変革が成功したかどうかを測る基準となるのが、プロジェクトによってもたらされた「経済的利益」だ。コストがいくら浮き、収益がいくら増え、顧客の満足度がどれだけ上がり、製品の質がどれだけ向上し、在庫がどれだけ削減されたか。それがカギだ。

──C3.aiは2019年6月、従業員に対し、コンピュータ科学の修士号取得の費用を肩代わりし、学位を取った人には報奨金も払うと発表しました。

米欧、アジアを含め、C3.aiの従業員の中には、マサチューセッツ工科大学(MIT)やハーバード大学、東京大学など、一流校出身者が多い。それでも、わが社が、この業界で成功し続けるには、常に従業員を再教育していく必要がある。

新しいタイプの人材が必要になったとき、企業にはふたつの道がある。従業員を解雇して採用を行うか、従業員を再教育するか。未来のリーダーは、後者の方法によって21世紀の経済で成功を収めていくだろう。C3.aiは社会人教育を信奉し、それを成し遂げた従業員に報酬を与え、会社の英雄として評価する。

今は、オンラインでAIや機械学習、ビッグデータ、デジタル変革を学べる。オンライン学習プラットフォームの「Coursera」(コーセラ)では、スタンフォード大学やMITなどの授業を受けられるため、従業員に受講や修了証の取得を勧めている。

C3.aiは社員400人の比較的小さな会社だが、誰もがコーセラで学んでいる。これまで、彼らに何百万ドルもの報奨金を出した。本社には、彼らの名前を壁に貼った「ホール・オブ・フェーム」(栄誉の殿堂)コーナーがある。コンピュータ科学の修士号取得希望者には学費や諸経費を負担し、卒業時には2万5000ドルのボーナスや15%の昇給、株式の付与などの恩恵を与える。現在、16人が学位取得を目指し、学んでいる。

学び続けることで知識や能力が増し、仕事への満足度や生産性も高まる。人生にも良い影響が及び、会社や顧客にとってもプラスだ。従業員のスキル強化にフォーカスする企業が21世紀を生き延び、繁栄し続けられるだろう。
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インタビュー=肥田美佐子

この記事は 「Forbes JAPAN 4月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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