ビジネスパーソンならば、商談や打合せなど、日々多くの「初対面の機会」があるだろう。そんな出会いの洪水の中で、相手に好印象を残し、印象的な人間として記憶してもらうには、どうすればいいのか。
プロのメイクアップアーティストとして著名人を手がけてきた岡田いずみが、記憶に残る「顔」をつくる方法について伝える連載。1回目は「眉」についてお届けする。
目を惹く美しさは「違和感」でできている
ヘアメイクの岡田いずみです。連載のタイトルは「0.2秒で人の心を掴む『印象力』」ですが、まずは、なぜ「0.2秒」にこだわるのかからお話したいと思います。
私は以前、コンビニコスメのプロデュースにかかわったことがあるのですが、そのときに「コンビニ商品はたったの0.2秒で客の目を惹くことができなければ、2度と見てはもらえない」という衝撃的な事実を知りました。人は、瞬きほどの時間で目に留まったものしか見ていない、つまり覚えてないのです。確かに、あれだけ多くの商品が並んでいれば、そうなるのも頷けます。
では、その0.2秒で、人はいったいどんな情報をキャッチしているのでしょうか。
実は、一番先に目が捉えるのは「違和感」です。生き物はまず自然界にない色や形に不自然さを感じて、そのような色をまず認識すると言われています。例えば、カラスよけに使われている黒と黄色の正円模様は、景色の中にあると異様なコントラストをうみ、近づいてはいけない気持ちになります。危険を回避するため、その違和感をキャッチするスピードは早く、見逃さないようにできているのでしょう。
また、広い白いスペースに小さな黒い点があった場合をイメージしてみてください。面積は白の方が大きいとしても、私たちの目は小さな黒い点のほうをキャッチします。白のなかにある黒への「違和感」が視線誘導となり、目を惹きつけているのです。それがどういうものであるかをしっかり見て、メッセージを受け取るのはその後です。
このように、違和感で目に留める方法は、コンビニの商品のみならず、人の印象を左右するヘアメイクでも同じことが言えます。目に留まりやすい美しさとは、規格から少し外れた「違和感」と共にあるからです。
タレントのヘアメイクはまさにその典型。大きな目、小さい顔など、周りとコントラストのある心地のいい違和感が、時に新しい美の基準として、以前の美意識とは真反対のものも希少なバランスとして受け取られ、美しさを更新してきました。記憶に残る印象的な人物になろうとしたら、その違和感を上手く取り入れることがとても効果的なのです。
顔の中でいい意味で違和感を演出できるのは「眉」
では、印象に残るいい意味で「違和感がある」顔にするためには、どうすればいいのでしょうか。それにはいくつか方法がありますが、まずは「眉」を変えると非常に効果的です。
例えば、最近80年代に流行った太眉がリバイバルしましたが、細眉が流行っていた70年代から一転してあの太眉が現れたときの衝撃は、かなりのインパクトがありました。そのころ少女だった私から見ても、ブルック・シールズやW浅野など、意志を感じる直線的で上昇した太眉の大人は新鮮で、パワフルにいきいきと輝いて見えました。バブルの時代の勢いに乗ってエネルギッシュな力を放っていた80年代の華のある顔に惹かれ、そのパワーを表現できる太眉がいままた広がったのも、眉一点だけを変えるだけで、大いに効果的であったことも要因だと思います。