5G元年、スポーツ配信は進化する。放映権「ダム崩壊」の危険性とは

ソフトバンクのCMにも起用された八村塁 (Getty Images)


昨年3月20日、東京ドームにてオークランド・アスレチックス対シアトル・マリナーズのMLB開幕戦が行われ、21日の2試合目ではイチローの引退が発表された。

私自身、三塁側マリナーズのダッグアウト後方の席に座っていたため、イチローの打席を正面から見据えることができ、毎打席その動画を撮った。私の隣も、その隣も、その隣も、ネット裏も一塁側の観客も、みなスマホを構え、静止画ではなく動画を撮っていた。

ただし、東京ドームに詰めかけた観客が、撮影した動画をその場でSNSなどにアップロードしようとしたため、スマホには円を描く「ぐるぐる」という例の「待ち」アイコンが表示されるだけで、いっこうにアップロードされることはなかった。私も、隣席も、その隣も「ダメですね」と諦めた。

これが4Gの世界。だが5Gの世界では、そのアップロードにストレスはなく、実現される。

つまり5Gの新国立競技場では8万人の観衆が開会式の模様を録画しSNSなどに即時アップロードすることが可能となる。中にはライブストリーミングする観客も現れるだろう。現在でもアップロード、ストリーミングは当たり前だ。しかし、それが何万人も集まる競技場でも可能になる。

新国立競技場
東京五輪の会場となる新国立競技場(GettyImages)

五輪会場では動画撮影禁止。でも聖火リレーはOK?


オリンピック・パラリンピックの入場券購入に際しては、規約にて五輪会場での動画撮影は禁止とされ、購入者はその規約に同意したことになる。これは、テレビ局がすでに購入済の放映権に抵触しないための規約だ。

放映権は日本国内に限った問題ではない。国際オリンピック委員会(IOC)の収入の半分を捻出しているとされるアメリカ3大ネットワークのひとつNBCの放映権にも波及する大事だ。

だがしかし、8万人の観客が動画撮影を同時に試みたとすると、いったい誰がそれを取り締まるのだろう。5Gの「多数端末接続」という利点がここで最大限に生かされつつ、権利問題へと発展する。

つい先日、日本で行われる聖火リレーについて、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会は「動画による撮影禁止」の通達を出し、あまりの批難の声に翌日撤回。「動画撮影も問題なし」とした。記憶に新しい。

こうした傾向はYouTubeが登場してから今日までの歴史の再現になるだろう。
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