ラグビー・ワールドカップ日本開催。なぜ汐留の会場だけ5G?
では何の役に立つのだろうか。やはり現時点では観光、エンターテインメントそしてスポーツなどレクリエーション要素に富んだ領域から導入が進んで行くだろう。各通信社の5G TV CMがスポーツやエンターテインメントをテーマにしているのは、そんな実情が反映されている。
NTTドコモが2019年ラグビー・ワールドカップ日本開催においてサポーティング・カンパニーとなり、今年の東京オリンピック・パラリンピックでもNTTグループとして、ゴールドパートナーに名を連ねているのは、そんな狙いがあるからだ。
実際、昨年9月20日のワールドカップ開幕戦「日本対ロシア」戦において、ドコモは5Gを「プレ商用」化。味の素スタジアムと汐留の間を一部5Gでつなぎ、大画面映像や大容量画像をデリバリーし、汐留に招いたメディアを含む観客に披露した。
2019年、日本で開催されたラグビー・ワールドカップ。日本中が熱狂した (Getty Images)
ここで留意しなければならなかったのが、放映権だ。
ワールドカップの映像については、NHKや日本テレビが莫大な権利料を支払い放送する。しかし、放送網を介さずとも5Gを使用することで、4K、8K映像の視聴が可能になるため、放映権の侵害が想定される。
この「プレ商用」においては、あくまで汐留の閉じられた会場において、限定された招待客のみが視聴できる座組のため、放映権には抵触しない実証実験としての扱いだった。
だが、5G網が充実し本格的に商用化された際、どのような弊害が起こるか。
商用化後の今夏、あくまで限定されたエリアのみだが、東京オリンピック・パラリンピックの各会場は5G化される。
昨年から先行して5G化が進められているアメリカでも、シアトル在住のマーケターに訊ねたところ、「5G端末を持っている人は稀だし、電波も忘れた頃に『あ、ここは5Gだ』というぐらいで、まだ5G社会が到来したという実感はない」とのことだった。よって、日本でもすぐさまユーザーに5Gのスマホが行き渡るとは想定しにくい。
しかし、もし5Gスマホを持つユーザー8万人が新国立競技場に集まり、開会式を見守ることになったら何が起きるか。とりあえず、ここでは無事、今年予定通りにオリンピックが開催されると仮定しよう。