中国の国営メディアは、ウイグル人労働者には賃金が支払われていると主張する。しかし、ASPIの研究チームが明らかにしたところによれば、労働者たちは隔離された宿舎に住み、帰宅は許されない。また、勤務時間以外には、中国標準語を学ばされたり、イデオロギーの再教育を受けさせられたりしている。収容所に入れられているウイグル人が受けさせられているのと同じような訓練だ。
報告書は、新疆ウイグル自治区南部にあるいわゆる職業訓練所を「卒業した」集団が、中国東部の安徽省にある工場へと直接移送されたケースを紹介している。この衣料メーカー「浩缘朋制衣有限公司(Haoyuanpeng Clothing Manufacturing Co. Ltd)」が顧客として列挙した企業には、スポーツ用品企業のフィラやアディダス、プーマ、ナイキが含まれていた。
ウイグル人労働者たちは、アップルのサプライチェーンの一端をなす工場にも移送されている。そのなかには、アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)が2017年12月に訪れた広州市の工場もあった。
アディダスやボッシュ(Bosch)、パナソニックなどの企業はASPIに対し、報告書で指摘されていたサプライヤーとは直接的な契約関係にないと述べたが、その先に存在するサプライチェーンとの関係の有無を除外できる企業は一社もなかった。
「こうした状況は、中国から製品を購入する企業と消費者に対して、評判の上でも、法的な面でも、新たなリスクをもたらす。新疆ウイグル自治区に限らず、中国のどの地域で作られた製品であっても、強制労働者の手を介している可能性があるためだ」と、報告には書かれている。
さらに、こうも述べている。「そうした行いによって汚染されてしまった世界的なサプライチェーンは、次のことを意味する。今や、中国で製造された商品について、強制労働によるものではないことを保証するのは難しい状況だということだ」