ホワイト教授のリアリズムは、非常に厳しい未来を予言する。「中国の野望に反対すれば、直接、対決することになる。中国が望むものは何でも与えるべきだとは言わないが、我々はいくつか譲歩しなければならないだろう」。教授は「中国は成長を続け、より強力になった。中国との冷戦を唱える人もいるが、その結果はどうなるのか。紛争になって米国が勝てるとは思わないし、日本や豪州も勝てるとは思わない。核戦争の可能性だってある」とも語る。
日米が掲げる「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)構想や「QUAD」と呼ばれる日米豪印安保協力についても厳しい指摘が飛んだ。「FOIPの実現のために必要なのは、中国の成長力と影響力の封じ込めだが、非常に難しいだろう。アジアにおける米国の外交的、経済的、軍事的な立場が中国よりも弱体化しているからだ」。教授に言わせれば、FOIPは「単なるスローガン」で政策ではないという。教授は、QUADの4カ国の協力にも懐疑的だ。「どの国も、中国との関係が非常に重要で、中国との関係を犠牲にすることを望んでいないからだ」。
そして、ホワイト教授は日本の未来についても言及した。「尖閣諸島で(日中の)衝突が起きたとき、豪州は中国に経済制裁を科すだろうか。そんなことはない。プレスリリースや閣僚声明は出すだろうが、日本を支えるために、中国との関係を危険にさらさないだろう」
インタビューの最後に、私は日本の一部にある「優秀な自衛隊と日米同盟があれば、日本は必ず中国に勝てる」という意見について、ホワイト教授の意見を聞いた。教授は「自分の評価に非常に冷静であることがとても重要だ。戦略における最も一般的な間違いの一つは、敵対者を過小評価することだ」と語った。教授は、米軍が世界で最強の軍隊である事実は否定しない。ただ、紛争の舞台として予想されるのは東アジアであって、中国の裏庭とも呼べる場所にある。「米国は、中国を打ち破る十分な力を東アジアに投入できない。中国にとっての東アジアは、米国にとってのカリブ海のようなものだからだ」
そしてホワイト教授はこう付け加えた。「日本は75年前、米国を過小評価していた。山本五十六連合艦隊司令長官だけは違った。それはヤマモトが当時、米国が保有していた船腹量ではなく、米国の造船所の建造能力について理解していたからだ」。教授は、山本五十六がかつて「(対米戦争を)やれと言われれば、最初の半年や1年は暴れてご覧に入れる。しかし、2年、3年となれば全く確信は持てない」と述べた事実を指摘したかったようだ。教授は別れ際、日本で翻訳出版された「アメリカが中国を選ぶ日」をプレゼントしてくれた。もっと現実に目を向けて勉強しなさい、という意味だと受け止めた。