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朝日新聞編集委員(朝鮮半島、米朝・日米関係担当)

Claudine Van Massenhove / Shutterstock.com

「ローウィ・ポル(ローウィ研究所の世論調査)が参考になる」。オーストラリアのキャンベラやシドニーで中国の進出について取材した際、現地の安保専門家たちはしばしば、同じ言葉を口にした。

豪州の独立系シンクタンク、ローウィ研究所。2003年に設立された。若い歴史にもかかわらず、毎年、安全保障や外交などに関係するタイムリーな世論調査を行い、注目を浴びている。特に、昨年6月に発表された調査では、豪州の中国に対する世論に大きな変化が起きていることが明らかになった。

例えば、「中国の責任ある行動について信頼しているか」という問いに肯定的に回答した人は、18年の52%から19年は32%に急落した。「中国によるアジアへのインフラ投資計画は、中国の地域支配計画の一部だ」と考える人は79%、「豪州は経済で中国に依存し過ぎだ」と答えた人は74%、そして「経済関係に悪影響を及ぼしても、豪州は中国のこの地域での軍事行動により抵抗すべきだ」と答えた人も77%に上った。

キャンベラで取材した戦略政策研究所(ASPI)のマイケル・シューブリッジ副所長によれば、豪州の中国政策は3年ほど前まで「経済に焦点を当て、戦略を無視する」というやり方で成功を収めてきた。ところが、中国の急速な伸長ぶりに、豪州の一般市民の世論は、政府や議会よりも速いスピードで変化しているという。

2019年6月、天安門事件30周年のニュースが流れていた頃、中国の軍艦3隻がシドニー港に入っていた。豪州国防省は「通常の親善訪問だ」と説明したが、世間の反応は「なぜ、虐殺の記念日に人民解放軍がここにいるのか」という極めて厳しいものだった。

豪州世論の急速な変化について、より詳しい話を聞こうと、ローウィ研究所を訪ねた。シドニーの中心部にそびえる高層ビル群のなかに隠れてしまいそうな古い洋館が、研究所の本部だった。そこで、エグゼクティブ・ディレクターを務めるマイケル・フリラブ氏に話を聞いた。

フリラブ氏も、「中国の行動への信頼」が前年比で20%も減った点に着目していた。「今年の調査で最も目立った結果は、オーストラリア人が中国に神経質になっているという事実だ」と語る。「中国に対する私たちの視線は冷え込んでいる。今や毎日、中国が国内最大のニュースだ」。

取材を行った11月下旬も、中国によるスパイ疑惑、新疆ウイグル地区や香港での民主化・人権問題、中国と豪州の間の貿易摩擦などが、連日テレビや新聞紙面を賑わせていた。「私たちは中国に強い懸念を抱いている。豪州政府の政策も中国に対して著しく厳しくなっている」

文=牧野愛博

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