レストラン広報から書籍PRへ。「ヒットにつながるパブリシティの真髄」を求めて

本しゃべりすと/書籍PR 奥村知花さん


──自信をなくしたり、落ち込んだときの立ち直り方は?

時間を決めて一定の期間、膝を抱えてじっくりどん底の気分にひたり、逆境をしかと見つめる。

メディアに本を売り込むパブリシティの仕事は、断られるのが大前提。しかも、クライアントから活動費をいただきながら、「必ずメディアに出せます」とお約束できない種類の仕事です。断られ続けたときの心の折れ具合と、プレッシャーはなかなかの重圧です。

もともと私はネガティブマインドだったのですが、わりと大人になってから読み返した、有島武郎の『小さき者へ』で、ポジティブシンキング法を手に入れました。有島武郎の奥さんが、幼い子供を残して亡くなってしまって。そんな子供たちをなぐさめる一編として書いているんですけど、たぶん、自分自身を奮起させるためでもあると思うんです。その作品を締めくくる言葉が、「前途は遠い。そして暗い。然し恐れてはならぬ。恐れない者の前に道は開ける。行け。勇んで。小さき者よ」。この部分を読んで、突破口を改めて考える、そうすると落ち込んだ気分から浮上できるんです。ネガティブマインドに陥ることもありますが、スイッチを切り替えて邁進できるのが、強みかもしれません。

──あなたにとって理想の仕事(働き方)とは?

「今日もご飯がおいしいな」と感じられること。何かもやもやしたものを抱えていると、ご飯がおいしく感じられません。そうするためには、仕事でもプライベートでも、「やりきった感」を持てるよう、真摯に向き合うことが大切なんだと思います。

──これから何かを始めたい人へのアドバイスは?

思っているだけでは、何も始まらない。やってみないことには、それが成功するのか失敗するのかわからない。「えいや!」という気合は、案外大事だと思います。そして、失敗もそのまま愛してほしい。たとえ仕事としては失敗であっても、人とのいい出会いがあったなとか、その中にキラリと光る砂金のような拾い物があるかもしれない。転んでもただ立ち上がるのではなく、そんな砂金をいくつもつかんでから立ち上がってほしいと思います。

自分にできることを一生懸命コツコツやっていけば、「あのときつらい思いをしたから、今の自分がある」、そんなふうに思える、〝結果オーライの神様〞の存在を感じられるはずだから。


奥村知花◎本しゃべりすと/書籍PR。1973年生まれ、東京都出身。総合アパレル商社、レストラン業界を経て、2003年より書籍専門のフリーランス広報として独立。新刊書籍のパブリシティ活動のほか、「本しゃべりすと」という独自の肩書で、執筆やラジオ番組の書籍紹介も担当。著書に『進む、書籍PR!』(PHP研究所)がある。

編集=石井節子

ForbesBrandVoice

人気記事