「救急医療搬送」をナイジェリアに 若きフライングドクターの献身

オラ・オレクリン。「ハンニバル・レクター」の映画を愛する若き医師であり、ヘリコプターパイロット、作家、医療リサーチフェロー。そして、ナイジェリアで注目される起業家でもある。

2011年、Forbes Africaに掲載されたこの記事に大変感銘を受け、翻訳の許可を得たので全文紹介したい。


ナイジェリアで一人の若い女性が新しいビジネスに取り組んでいる。 オラ・オレクリン。彼女は家族を亡くした痛みを乗り越え、その夢を医療へ、そして空へと向けた。

サハラ砂漠南方のアフリカ人女性、オラ・オレクリン25歳。アフリカの若き起業家の中でも一等地を抜く逸材だ。クリアな目的意識に駆られた彼女は、イギリスでのキャリアと経験を祖国に持ち帰り、富とキャリアを築こうとしている。

彼女は、石油会社や工場の事故で怪我をした労働者を遠く離れた病院まで即時に運ぶことができれば、人命救護にもビジネスにもなる、と考えたのだ。

ナイジェリアではすでに1960年代から、エアアンビュランス(救急医療搬送)サービスの必要性がささやかれ始めていたが、彼女が動き出すまで誰もそのアイディアを現実に移そうとはしなかった。

「私はナイジェリアのヘルスケアについてとにかく一心不乱に考えていたし、自分は医療に関わるために命を得たと信じていました」

「エアアンビュランスサービス」でナイジェリア医療にイノベーションを

彼女がそこまで若くして多くを成し遂げられた理由に、「謙虚さ」があるかもしれない。「私は正直、不器用だし整理が苦手だし、感情も激しいんです、本当に……」と彼女は言う。

トラウマケア、そして救急医療の専門ドクターである彼女は、アフリカ大陸の医療の現場を変えるため、西アフリカ初の救急医療移送サービス「フライングドクターズ・ナイジェリア・リミテッド(Flying Doctors Nigeria Limited)」を立ち上げた。まさに、ナイジェリアのヘルスケア分野にとっての革新である。

創業に先立っては、インドとアフリカでエアアンビュランスのサービスについて学んだ。個人的な貯蓄や車、ロンドンのアパートなどを売り、個人投資家から投資を募って創業資金20万ポンド(約2850万円)を調達した。

同社は現在では25人の専門の社員を抱えている。見込み顧客を含むクライアントは金融サービス、石油、公共セクターなどが主で、会社は速いスピードで成長している。

「エアアンビュランスサービスは今後、石油、ガス産業と製造業といった分野からさらに重宝されていくに違いないと考えています」

「フライングドクターズ」は、世界有数の原油生産国ナイジェリアの持つ「良質なヘルスケアの不在」という問題への解決策となりそうだ。この国では、工場や石油産業の立地条件によっては、一番近い病院まで100キロということも稀ではないからだ。

この状況一つだけを考えても、ナイジェリア国内、および国外の企業からさらに契約が取れる見通しは明るい、そうドクター・オレクニンは考えている。

彼女はさらに、しかるべき災害マネジメントシステムを持たない公共セクターや地方行政からの要請も今後増えていくだろうと予測する。
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文=石井節子 写真=Forbes AFRICA

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