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2020.03.20 12:30

ロールスロイス、2019年の芸術的特注車の数々

「ベイサイド・ドーン・エアロ・カウリング」(C)ROLLS-ROYCE

「ベイサイド・ドーン・エアロ・カウリング」(C)ROLLS-ROYCE

花が好きなストックホルム在住のある起業家は昨年12月、ロールスロイスのビスポーク(特注)チームに、自家用車として高級車「ファントム」の特別モデルを注文した。その結果生まれたのが、無数の刺しゅうが施され、運転手と同乗者を花の世界に浸らせる「ローズ・ファントム」だ。


「ローズ・ファントム」(C)ROLLS-ROYCE

同社のトルステン・ミュラーエトベシュ最高経営責任者(CEO)はによると、製造するには高いスキルが必要で、高級車メーカーならどこでも実現できるわけではない。「これは間違いなく、現世代のロールスロイス・ファントムの中でも最高作品の一つだ」(ミュラーエトベシュ)

高級ブランド各社の間では、個々の好みに合ったサービス提供の重要性に対する認識が強まっている。ロールスロイスはビスポーク(特注)の活動を拡大し、顧客と直接コラボレーションをし、個性的な車を提供している。昨年の年間売上高は同社史上最高を記録。世界50カ国以上で前年比25%増の5152台を販売した。また、ビスポーク部門が2019年に特注生産した台数も同社116年の歴史で最多だった。


(C)ROLLS-ROYCE

新ファントムでは、ダッシュボードに特注アート作品を展示する斬新なコンセプト「ザ・ギャラリー」が導入された。ファントム・ローズでは、刺しゅうされたバラがフロントガラスの前のダッシュボードを通して描かれている。

ローズ・ファントムのほかに、ロールスロイスは海をテーマとした車「ベイサイド・ドーン・エアロ・カウリング」も手掛けた。日本・横浜の顧客による依頼で作られたこの車は、ヨットとスピードボートから技術面や素材のインスピレーションを得ている。ヨットのデッキを思わせるオープンポア仕上げのチーク材パネルを使用しているほか、後部の外装デッキの塗装と内装の革の色は青い海と白い帆を思わせるデザインだ。


「ベイサイド・ドーン・エアロ・カウリング」(C)ROLLS-ROYCE

もう一つの面白い例が、手工芸とデジタルデザインを組み合わせた「デジタル・ソウル・ファントム」だ。くすんだ石英と白のツートンカラーのこの車の特徴は、製品デザイナーのトールステン・フランクが製作した「ギャラリー」だ。購入者の特徴をアルゴリズムにより解釈し、3D印刷によりステンレス鋼の板に変換。それを手作業で研磨し、24カラットの金でめっきをかけて完成させる。

他にも多くの芸術的モデルがあるが、最後に「ゴースト・ゼニス」コレクションを紹介しよう。同コレクションは、若い顧客に同社のブランドを広める上で大きな助けとなった中型車「ゴースト」シリーズの歴史に幕を引くものだ。

50台限定のこの車は、2009年に現代ゴーストモデルの先駆けとなったコンセプトカー「200EX」にインスピレーションを得たものだ。200EXの設計図をアートワークにしたものを50に分け、それぞれの車の中央コンソールに刻み込んでいる。


「ゴースト・ゼニス」コレクションのセンターコンソール (C)ROLLS-ROYCE

ミュラーエトベシュは「こうした自動車はユニークな芸術作品となる。ユニークな依頼作品全てがグッドウッドの一つの生産ラインで作り上げられたことを考えると素晴らしい偉業だ」と述べた。「こうした人々のスキルは限界を知らない」

編集=遠藤宗生

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