「起業家ワナビー」と「成功する起業家」の違い
──「精神的タフネス」以外に重要となる素養についてもお聞かせください。
「精神的タフネス」を持った上で必要なのが「チーム構築力」です。
頭脳明晰な方が起業家として必ず成功するかというと、そうではありませんよね。
“最後は人”と言われますが、私は“最初から人”だと思います。優れたチームを作ることのできる人格、度量が起業家には必要不可欠です。
──「チーム構築力」はどのように高めればよいのでしょうか。
チームがうまくいくロジックはいたってシンプルです。優秀な人を雇い、彼らが最大限活躍できる環境を作り、ハッピーでいられる組織を作ることです。
弊社は創業以来、採用方針として「Hire people better than you」を大切にしてきました。要は「自分よりも優秀な人を採用する」ということです。
そのうえで、優秀な人材がハッピーでいられるための「物理的満足度」と「精神的満足度」を両方高めることを心がけてきました。
「物理的満足度」は、たとえばフリーランチといった職場環境や福利厚生を提供したり、業界水準を超える給与を保証する、ストックオプションを通じたファイナンシャルアップサイドを確保するといったことです。
「精神的満足度」を高めるためには、メンバーが「プロとして組織に認められている」と思える環境づくりが大切です。私やCTOの太田を含めた弊社のボードメンバーは、メンバーに対しての感謝の言葉を欠かすことはありませんし、「怒るときは1対1で、褒めるときはみんなの前で」という基本をとても大切にしています。当社メンバーであることの誇りにつながる会社のブランディングへの投資、オープンソースコミュニティへの積極的な貢献を評価する姿勢なども大事だと思っています。
会社で一番大事なのは「人」です。その一番大事な「人」が最大限満足できるように意識し続けることが、「チーム構築力」を高める上で大切だと思います。
──起業家の素養として「精神的タフネス」「チーム構築力」を挙げていただきましたが、数少ないチャンスを掴む「実行力」も重要と感じました。
おっしゃる通り、いわゆる“起業家ワナビー(Want to be)”と“成功する起業家”の最大の違いは、「一歩踏み出す力」です。
時流や人との出会いなど、タイミングは人それぞれだと思うのですが、勝負をかけるべきタイミングで一歩踏み出す。一歩踏み出して動きはじめた人にだけ、幸運はやってきます。
──一歩踏み出すためには何が必要なのでしょうか?
「謙虚さ」、すなわち自分一人では何もできないという意識が行動を促します。そこに「精神的タフネス」が備われば、一歩踏み出すことができるでしょう。
これは「チーム構築力」の話とも繋がりますが、「謙虚さ」があるからこそチームを大切にすることができます。
まとめると、「精神的タフネス」「チーム構築力」「謙虚さ」を持って好機に一歩踏み出せることが、成功する起業家に共通する素養だと思います。
連載:起業家たちの「頭の中」
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