人身売買された過去も 東ティモール大統領候補の波乱の人生

東ティモールの元大統領補佐官であり、ルブロラ・グリーンヴィレッジ代表のベラ・ガルヨスさん

利益向上、市場拡大、株価上昇と、目に見える成果を追い続けることばかりが、必ずしも「正解」として求められることがなくなってきた昨今。これからの組織、そして私たち個人の在り方はどう変わっていくのだろうか? 

そのヒントを探るべく、日本の酒蔵の多様性を継承することを目的に、ユニークな事業展開を進める「ナオライ」代表の三宅紘一郎が、これからの社会を創るキーパーソン、「醸し人」に迫る連続インタビュー。

第10回は、東ティモールの元大統領補佐官であり、ルブロラ・グリーンヴィレッジ代表のベラ・ガルヨスさん。彼女は、アジアで最も貧しい国と言われている東ティモールを、持続可能な開発へと導くためにソーシャル・イノベーションを起こしている。

1972年に東ティモールに生まれたベラさんは、インドネシア軍の侵略下で、兄弟を飢餓で亡くし、父親も投獄される。彼女も幼少期に、わずか5ドルで人身売買され、軍による薬品投与で子供が産めない身体に。その後、少女兵として独立運動に身を投じた後に、カナダへと亡命する。

海外での独立運動、国連開発機関への勤務を経て、東ティモールの独立後、大統領補佐官に就任する。2015年には、友人である日本人夫婦の起業家が立ち上げた一般社団法人Earth Companyの支援で、東ティモール初の環境学校を設立。農園や宿泊施設やレストランも併設するルブロラ・グリーンヴィレッジへと発展させている。


──ベラさんの壮絶な人生に心を動かされました。その人生において、特に大きな影響を与えてくれた人はいますか?

母親の生き方からは大きな影響を受けています。男尊女卑の考えが強い社会のなかで、母親は自分が女性だからと言ってできないことはない、なんでも自分でできると常に自分を励ましてくれていました。また、しっかりと自分がやるべきことをやらなければ悪い結果になることも、目の前で起こる事例から教えてくれ、すべて腑に落ちるものばかりでした。

──そういう教えを受けて歩んできたベラさんが、社会的に責任ある立場となった今考えるリーダーシップとはどんなものでしょうか?

人々を周りに集めて、自分のことを崇拝するように仕向けて振る舞うのではなく、見えていない人が見えるような、聞こえていない人が聞こえるような手助けをし、自分たちで行動できるようにしてあげることが大切だと思っています。

それは母親から学んだことでもあり、身の回りに起こっていることから大切なことを学び、ひらめきを与えられる行動を率先してすることこそが、リーダーシップだと思っています。

シンプルに言うなら、良いリーダーとは、次の新しいリーダーを育てられる人であると思います。自分のフォロワーをつくるのは「ボス」であって「リーダー」とは言えません。権力を持ちたいと思う人で、よく自分のことをリーダーだと思っている人がいますが、実は、やっていることはボスのようなことをしている人は多いのです。

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インタビュー=三宅紘一郎 校正=鈴木広大 カメラ=藤井さおり 同時通訳=古波津大地

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