配車サービスのウーバーが国連機関と連携をとり「今後5年以内に女性を対象に100万人の雇用を創出する」と宣言したのは3月10日のこと。しかし、女性の地位向上を目的とする組織「国連ウィメン」との取り組みは、10日足らずで物別れに終わった。水面下で一体、何が起こっていたのか?
国連ウィメンとウーバーの提携話は、約1週間で幻と消えた。国連ウィメン側が、ウーバー運転手の低い報酬と不安定な雇用環境に対して激しく抗議したためだ。
ウーバーは3月10日、国連ウィメンとグローバルパートナーシップを組むと発表した。提携の目的の中には、ウーバーの「2020年までに100万人の女性運転手を雇用する」という目標も含まれていた。しかし3月下旬、国連ウィメンのプムジレ・ムランボ・ヌクカ事務局長が「ウーバーとは提携しない」と明言したことで、話は立ち消えになった。
国連ウィメンはウーバーとの提携を発表後、大きな批判を浴びていた。ヌクカ事務局長は批判を受け、「私たちは世間の声に耳を傾けるだけでなく、正しい行動を選択します」と声明を出した。
「国連ウィメンは雇用創出の取り組みに関するウーバーの提携オファーには応じませんので、ご安心ください」
最近行われた国連ウィメン主催の女性の権利促進イベントに、ウーバーはスポンサーとして参加している。しかし、国連ウィメン担当者はフォーブスの取材に対し、「今後新たなパートナーシップを組む予定はない」と明言した。
「あのイベントがウーバーとの最後の提携です。5年で100万人の女性運転手を雇用するというウーバーの目標にも全く関わっていません」と国連ウィメン広報担当のOisika Chakrabartiは言う。「現段階で、ウーバーとの提携計画は一切ない」という。
ウーバーはブログで今回の試みを発表した際、具体的にどのような取り組みを共同で行っていくのか説明していなかった。
ブログには「国連ウィメンとのパートナーシップを楽しみにしています。私たちは世界中で、このような取り組みを広めていきたいと思っています」と書かれている。
ウーバー側は国連ウィメンのイベントのスポンサーになったことを「光栄だ」と表現し、2020年までの目標として掲げた「100万人の女性雇用の創出」に向けて努力をしていくことをあらためて宣言している。
「私たちは女性の雇用機会を世界規模で広げようという国連ウィメンのビジョンに共鳴します」とウーバー側は表明。
「このビジョンの一環として、2020年までに女性運転手を100万人増やすという大きな目標を掲げます。女性の経済的平等と雇用機会創出に立脚したこの目標を達成するために、国連ウィメンをはじめとする世界中の各機関からの提言に耳を傾けます」と続けている。
しかし、労働組合組織は、ウーバー側の女性ドライバーや乗客の安全性に対する配慮の欠如と、その不安定な雇用のあり方に対して異議を唱えた。
国際的な労働組合連合組織である国際公務労連は「100万人の女性が、ウーバーの与えるあやふやな、非正規な環境で働くことが、女性の地位向上につながるとはとても思えない」との声明を出し、国連ウィメンにウーバーとの提携をやめるよう呼びかけた。
さらに、「これはまさに女性運動が何十年もテーマにし、戦ってきたことだ。30年以上も前に撤廃されたはずの、最もひどい形のインフォーマル産業の象徴がウーバーだ」と怒りをあらわにしている。