──ジェンダーギャップの解消の進み方が遅い日本では、どのような職場の環境づくりが必要でしょうか。
実は日本だけでなく、世界中にジェンダーギャップはあり、その平均は男性を100%としたとき女性は68.6%です。特に危惧していることは、社会が変革するにつれて、もともとあるジェンダーギャップがさらに深まってしまう懸念があるということです。3つの例が挙げられます。
1つ目は、女性が多い事務職は、第4次産業革命で発展しているAIからインパクトを受けやすいということです。その仕事が今後、機械に置き換えられるのであれば、他のポジションで力を発揮できるようなトレーニングやスキルアップの機会が必要です。
企業は様々なチャンスを作って、環境を整備しなければいけません。また、第4次産業革命が起こっているからこそ、早く取り組むことで変革を起こす原動力にもなるでしょう。
2つ目は、女性は家庭内や介護など給料の少ない仕事をしている割合が高いことです。先進国では高齢化が進んでおり、今後も家庭や介護面など旧来型の「女性の役割」に割り当てられ、ギャップが大きくなってしまう。これは、社会として考える必要のある課題です。
3つ目は、1つ目と逆説的ですが、第4次産業革命が起こると新しい仕事も生まれます。新しい職に、より女性が自然に移行していけるような環境づくりをしていく必要があります。AIを専門とする女性は世界に22%という、リンクトインの発表もあります。そういった最先端の職でも女性が活躍していけるような環境づくりをすべきです。
──さらに、女性が仕事上で活躍できる環境づくりのポイントはありますか。
これは会社だけではなく、皆が考えるべきこと。決まった職を取り合っている感覚でいると前進しません。そして国も企業も社会も全て、女性が社会参画して活躍することはプラスであることを認識するべきでしょう。
私は企業から「女性の役員や役員候補がいない」といった相談を受けることがあります。そういった時に私は、こうした事をお伺いしています。
「女性が活躍できるような環境づくりをしていますか」「責任ある仕事に手を挙げた女性が、家庭との両立ができる柔軟な職場づくりをしていますか」
それぞれの役職に今までと同じような経歴を求めるべきではありません。そもそもかつては雇用機会が均等ではなかったのだから、「◯年以上の経験」という物差しが均一ではいけません。企業のトップはその前提を踏まえて前例にとらわれずチャンスを与えるというリスクを取らなければならないのです。
多様な視点や観点が少ないこと自体が、リスクと言えます。男女だけでなく、世代が違えば価値観も変わるかもしれません。「あらゆる意見を取り入れなくてはリスクがある」という意識をリーダーはもつ必要があるでしょう。
私のモットーのひとつに「変化は一晩では起こらない」という考え方があります。皆の心が変革についていかなければいけませんし、もっと速めていかないと、という思いもあります。私も皆さんと一緒に活動していけたらと思っています。