ついに法律まで改正、タブーなき米国の「犬は家族の一員」という認識

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自由でオープンな国のアメリカにも、さまざまなタブーが存在する。人種差別や性差別については世界で最もセンシティブな対応をすることで知られているが、犬を他の動物と同等にみなしてはいけないということは、あまり日本では知られていないに違いない。

筆者も犬は飼っているが、それでもアメリカ人の犬に対する愛着の普遍性と、その深度にはいつも驚かされる。ひとことで言えば、冗談でも犬の悪口を言ったりすると、思わぬところで大きな反発となって返ってくるので気をつけたほうがいい。

たとえば、「犬を散歩させなければならないので残業はできない」と部下から言われて、「犬だって1時間くらいは待てるでしょう」と言おうものなら、とんでもない暴君な上司と思われ、社内に悪評が広がる可能性さえある。

動物のなかで犬が人間に最も親しく飼われているということに異論はないが、アメリカの家庭における、この確固たる家族の一員ぶりは、やはり特筆に値する。逆も真なりで、野良犬を捕獲したり、はたまた、どこかの国の人間が犬を殺傷するような動画をアップしていたりすると、それに対するコメントは壮絶な怒りに満ちたものとなる。

戦後アメリカのすべての大統領は犬を飼い、犬と一緒の写真や執務室で犬と遊んでいる姿がたくさん公開されている。これだけ見ても、アメリカ人と犬との距離の近さはわかるし、さらに言えば、犬好きであることで選挙民の支持を集めていると言って間違いない。そして、この伝統とも言える犬への愛着を初めて破った大統領はトランプ氏で、彼がなぜ犬を嫌いなったかについては、ネット上で諸説が流されている。

25万人が「準介助犬」と搭乗


アメリカの統計局によると、1970年には全米の夫婦の40%が子供を持っていたのに対し、2012年には、その半分の20%に減少しているという。事実婚のカップルは数字に入れないという事情があるにしても、半分にまで減少したこの現象について、メイン大学のエイミー・ブラックストーン教授は、ペットとの「交流の進化」が1つの原因だと指摘している。

これは、犬が人間の家族の一員としてのステータスを年々向上させていることに由来する、「犬がいるなら家庭のあり方はこうでいい」という考えへのトレンドシフトと捉えることができるというのだ。
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文=長野 慶太

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