ついに法律まで改正、タブーなき米国の「犬は家族の一員」という認識

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家族の一員であるからして、当然、旅行に出かけるときでも、できれば犬と一緒にとなる。そこで問題となるのが飛行機だ。

さまざまな介護犬はもちろんのこと、近年、エモーショナルサポートドッグ(搭乗客の精神疾患や情緒不安定を鎮める役割の、いわば「準介護犬」)と申告すれば、本来徴収するべき動物の搭乗費用(通常はたいてい125ドル)を無料とする航空会社も現れている。

エモーショナルサポートドッグを機内に持ち込む現象は年々増加しており、その数はデルタ航空1社だけでも25万人にのぼる(2017年)。

すると、犬にアレルギーを持つ搭乗客と、犬を必要とする乗客のどちらを優先するかという問題が不可避となる。アメリカの航空局は、アレルギー客よりも、介助犬を優先するように行政指導をしてきている。実際、犬アレルギーを訴える客は、離れたセクションへ席の移動をさせられるが、万が一アレルギー反応が収まりそうにない場合には、降機を求められる。

これは身障者への空路アクセスを国として確保する法律から来ているので、この優先制度は一定の納得を得てきた。ところが、これは本来の介助犬を想定しているもので、エモーショナルサポートドッグを想定していない。2つの大きな違いは、介護としての役割をトレーニングされているかどうかで、前者の場合は、他人に対して吠えることはまれだ。

エモーショナルサポートドッグの無料搭乗の増加により、犬が搭乗客に噛みついたり、他の犬と喧嘩をしたり、あるいは粗相をするなど、航空会社はたくさんのクレームを受けるようになった。2013年に700件の同様のクレーム数だったものが、2018年には3000件にまで及ぶに至った。

そもそも、これまでの研究では、エモーショナルサポートドッグが情緒不安定や精神疾患を抱える搭乗客に治療や予防といった効用を与えているかについては、科学的に証明されていない。
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文=長野 慶太

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